NEWoMANに見る旬なデザイン その2

松本 知彦 for Private Time/2016.11.16/仕事仕事

前回新宿にできた新しい商業施設 NEWoMANの概要について書きました。
入っているショップや商品にはそんなに興味はないですが、空間設計やデザイン面ではチャレンジングな面があって面白いので是非行ってみてください。
勉強になります。
一生、輝く。新しい時代を生きる、すべての新しい女性のために。
という施設コンセプトですが、メンズもありますww

img

NEWoMANの2回目ではサインシステムについて話したいと思います。
サイトなどを見ると、この施設の導線やサインシステムついては、よい意見がほとんどありません。
結構な低評価です。
案内板がオシャレすぎてわからない
鏡に書かれた文字が反射して読みにくい
店名だけが書いてあって、何の店だか不明
デザイン性を追求しすぎ
と、、、かなり酷評されているのです。

img文字情報がほぼない天吊りの誘導サイン

でも個人的にはそうはあまり思いません。
新しいことをやれば常に酷評はつきものだし、むしろチャレンジングなことをしなければ面白くならない。
これが公民館や図書館なら酷評されても仕方がない。
でもファッション商業施設ならそのくらいのことはやってもよい、もっとやるべきだとも思います。
老人や子供は来ないし、ファッションが好きな感度の高い30以上の女子しか来ないのだから、ユニバーサルデザインにこだわる必要はないでしょう。

サイン計画は、6Dの木住野(きしの)彰悟さんが手掛けています。
この人はサインシステムで知られる廣村正彰さんの事務所で修行した人のようですね。
廣村さんは、デザインナイズなカプセルホテルとして話題になった9hoursや、日産のデザインオフィスのサインで賞を取っている人。
廣村さんの登場以降、施設におけるサインの役割が格段に上がったと言っても過言ではないと思います。

imgフロアの案内板は鏡面仕上げに

img日本語が小さいから見にくい&寄ると自分の顔が映る 笑

サイトで酷評されているように、フロアガイドのパネルにはミラーを採用しています。
見ようとして近づくと自分の顔が映りこむ。笑
サインデザイナーいわく、ファッション性の高い場所なので、親和性の高いミラーを使用し、場になじむようにデザインしたとのこと。
この施設ガイドのパネルもそうですが、誘導サイン系では文字情報が極力省略されています。
施設内の天吊りサインも、壁サインも、ほとんどすべてピクトグラムのみ。

imgルミネゼロの書体は極細のヘルベチカ

imgこっちはさらに潔くて日本語表記は一切なし!

これが隣のルミネゼロに行くとさらに強調されていて、エレベーター内のサインもほぼピクトのみという、かなり潔いデザインになっています。
補足で書いてある文字情報も細い書体の英字のみです。
日本語がない。
田舎から上京してきたじいさんと待ち合わせたとしたら、間違いなく会えないでしょう 笑
しかし確かにNEWoMAN、隣にあるバスタ新宿、そしてルミネゼロ、これらの新しい施設をつなぐ導線、関係性は極めてわかりにくいです。
ルミネゼロの屋上には、家庭菜園の畑があるのですが(コルビジェの考案した現代建築の5つの原則を思い出します)ここへ行くのもどうやって行けばよいのか迷います。
そういう意味では、複雑なビルの構造をわかりやすくサインシステムで説明しきれてないのというのはあるかもしれません。
法規制か何かのせいなのか、ビルの入り口や建築構造がすごくわかりずらいのです。
NEWoMANとルミネゼロのサインは同じデザインテイストで、施工の方法を変えているのが面白いと思いましたが。

imgボードにプリントではなく、ピクトを切り抜いた突き出し型のサインはカワイイ。

ということで、施設におけるVIシステム、その中でもサインの役割は、普段何気なく施設を訪れた際にはあまり気にしないと思いますが、注意深く見てみると面白いのです。
こういうリサーチを通して自分の仕事にフィードバックをするというのもありますが、話題の新しい施設には色々なデザイン戦略あって、行けば毎回参考になるところが多いです。

img英語表記すらないフロアの案内板 笑

死をテーマにした絵本「かないくん」

松本 知彦 for Private Time/2016.11.10/本

みんな知っているであろう絵本。
僕もこの本が出た当初に買いました。
でも別に子供のために買ったのじゃない。
自分で読むために買いました。

img裏表紙は真っ白で、それを見つめる表紙に描かれた主人公。

テーマは「死」について。
ストーリーは谷川俊太郎、絵は松本大洋、企画は糸井重里。
帯にもあるように、谷川俊太郎が一晩で書いたストーリーに、松本大洋が2年かけて絵をつけたというもの。
これがですね、よいという表現が適切なのかどうかわかりませんが、読んだ人にじわじわ問いかけてくる、考えさせられる内容なのです。
主人公のおじいちゃんが孫に語る、自分が小学校の時、隣に座っていたクラスメイトの友達が亡くなった話。
その友達の名前が「かないくん」です。
孫はおじいちゃんの話を聞いて、死について考える。
それははじまりなのか、終わりなのか。

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imgトレーシングペーパーが使われている扉をめくると、誰もいない教室に。

老人から次の世代に語られる死というテーマ。
かないくん、老人、孫の順番で、必ずやって来る死。
しかし、死ぬことの先について、本の中には書かれていません。
不明瞭でぼんやりとしている。
読んだ人各自が考えるようになっています。
ストーリーは谷川さん自身の経験を元にしているのは明らかでしょう。

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imgかないくんが亡くなったあと悲しむ同級生も新学期になると忘れたように。

肉親に限らず、周りの人の死というものは、ある年齢になればみんな経験していると思います。
僕も去年、仲のよい友達を亡くしました。
それを考えるとき、単なる寂しいという感情だけでは説明できない、本と同じように言葉にできない独特の感情があります。
それはもちろん、友人を亡くした喪失感だけではなく、僕にも必ずやってくるということも含めて。
本の中では、かないくんが亡くなったあとクラスメイトたちは嘆き悲しみますが、新学期になると、かないくんがいたことを忘れたかのように普通の生活に戻っていることに、子供だった頃の老人は違和感を感じるシーンが出てきます。
後半~ラストでは同じように、老人が亡くなったことをスキー場で知った孫が、何もなかったようにスキーを続けながらおじいちゃんのことを考える、というシーンが用意されています。
白い雪=空白というのが、主題のメタファーとして使用されている。

img日本画のような絵にまったく文章のない見開き。

本から伝わってくるのは少ない文章量と構図による、間のようなもの。
行間や絵の余白が読者に語り掛けてくる表現。
結論を明確にしないのと同じように、死によって生じる空白を伝える表現になっていると思います。
前半は老人の絵本作家が主人公ですが、後半は孫の女の子が主人公に変わって、2部構成になっています。
前述の雪を表現するために、白インクを使って6色で刷られているところにも白=空白の表現にこだわりが感じられます。
裏表紙をあえてISBNやバーコードを印刷せず真っ白にしたり、よく見ると単なる白ではなく、PP加工をマットと光沢で切り替えたり、装丁も凝ってます。

imgおじいさんは、ホスピスに入るとき、死の先を孫に暗示させます。

かないくんは子供が読んでもあまりピンと来ないかもしれません。
大人は読めば必ずそこに感じ入るものがあるでしょう。

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