Billy Childish  1959-

松本 知彦 for Private Time/2012.07.19/クリエータークリエーター

ファッション雑誌HUGEの今月号アート特集を見ましたか?
表紙に出ているイラストはどっかで見たことがあるなあと思って、書店で立ち読みをしていたら・・・
そうでした。
僕が80年代に大好きだったBilly Childishの自画像でした。

imgHUGE 2012年8月号

img巻頭1発目にBilly Childish特集

これにはびっくりしましたね。
Billy Childishはイギリス人で、アートスクールを中退した後、多くのバンドに参加してアナログ盤を大量に発表していましたが、どれも一貫したガレージパンクで一般に受け入れられるような音楽ではありませんでした

僕も20歳の頃、かなりガレージパンクを聞きました。
ガレージパンクを知らない人のためにちょっとだけ説明しますと、、
60年代に主にアメリカで活動していたバンドで、R&Rをベースにしたインディーズでキワモノのバンドを指しますが、その中でもTrashmen、Sonicsなどが有名です(と言ってもほとんどの人は?だと思いますが)
音は歪み、粗削りでB級で、タランティーノの映画に出てくるような音楽と言ったら一番イメージしやすいと思います。
70年代のパンクが登場する以前、商業主義とは無縁のパンクな音楽です。
もともとは60年代の音楽なのですが、その後もこのジャンルは継承されて(もちろん今でも)80年代に起きたモッズやロカビリーの音楽ブームとともに、英国でリバイバルがありました。
その中にMilkshakesというバンドがあって、僕はこのバンドが大好きで、アルバム全部買って聞き倒していたんです。
そのバンドにいたのがBilly Childishでした。

img84年発表のMilkshakesのアルバム。ソウル・バスの作品をパクッたジャケット。

img彼らが来日した時にもらったサイン。僕の宝物。

imgアナログ盤のレーベルのデザインもカッコいい!

彼はその後、マイティシーザーズ、ヘッドコーツなどなどいくつかバンドをやりますが、そのどれもが驚くほどにローファイで、荒くれていて、すごく下手クソで、ガレージサウンドそのもの、しかしスピリッツだけはあるようなバンドでした。
ジョン・リー・フッカーとボー・ディドリーに、ビートルズとキンクスを加えて クラッシュで割ったような音です。
これがアメリカのニルヴァーナなどのグランジ系のバンド、そして日本のミッシェルガンエレファントに影響を与えます。
ミッシェルガンエレファントの音は、彼らのガレージサウンドをもっと上手く(笑)した感じでした。
THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの頭につくTHEEはBillyのやっていたバンドTHEE MIGHTY CAESERSから取られています。
とにかくミッシェルガンが登場して「THEE MIGHTY CAESERSが大好き」と彼らが公言するまでは、こんなガレージサウンドなんて誰も聞かないイカレポンチだけの音楽だったわけです。

説明が長くなりましたけど、そんなわけで2012年になってBillyが雑誌の表紙に、しかもミュージシャンとしてではなく、アーティストとして登場していることに僕はびっくりしてしまいました。(と言ってもやっぱり知らない人には伝わらないと思いますが、、)

img油絵はムンクかゴッホみたいなタッチです。

img彼の絵は水彩の方がいいですね。

自分でレコードレーベルを立ち上げてジャケットに自分の作品を入れたり、詩集を出してポエトリーリーディングのイベントを開いたり、イギリス政府から生活保護を受けながらずーっとインディーズまっしぐらだった彼がここへ来て、日本の雑誌の表紙に取り上げられるほどメジャーシーンに踊り出てきたなんて個人的には本当にびっくりしています。
インタビュー記事を読むと、ただ単に出てきたわけではなくて、そこには企みがあって相変わらず生意気でやっぱりパンクなのは変わってないなあと感じます。

今や絶滅したパンクのスピリットを貫きながらも、そこできちんと生計を立てている彼のような存在は稀でしょう
他者(メディア)に迎合せず、傲慢で、自分を誇張する戦略があって、それがちょっと下らなくてバカバカしくて、でもそれによってお金を儲ける術を知っている。
それを仕掛けていく姿勢があるっていうのが微笑ましいと感じました。
方法はまったく違いますが、インディーズを商売にするためにメディアを利用したマルコム・マクラレンを思い出しましたね。

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