アントニオ・ロペス  1936 -

松本 知彦 for Private Time/2013.06.17/クリエータークリエーター

渋谷の東急文化村で開かれていたアントニオ・ロペス展に行ってきました。
このジャンル、嫌いではないのですが(むしろ好きではありますが、)同じような表現の作家が多く、似たような作品もたくさん見るので常に食傷気味で・・・このアントニオ・ロペスもその中の一人だろうくらいに思っていました。

imgスペインを代表する作家ですが、日本では初めての展覧会になります。

まわりの複数の友人から、ロペス展は良かったという評判を聞いたので、じゃ行ってみようかなという程度で足を運んでみました。
しかし行ってみてその予想は大きく裏切られることに。

展示内容はよかったです。
この手のリアリズムの作家の多くは技術だけが先行して、表現の幅が狭いものがほとんどですが、ロペスは、リアリズムの作家という以前に一人の表現者として、見る者に何かを訴えてきます。
家族や部屋の様子など身近なモチーフを淡々と描いているのですが、それらは「写真のように」緻密な描写を施して完成させることが目的ではないように見えます。
移ろい行く一瞬を捉えるのではなく、そこには変わらない普遍性が存在するような不思議な世界が表現されています。
作品1点を数年から10年以上かけて完成させるといいますが、その間にも景色やモチーフ、そして描いている本人の意識すら、ずいぶん変わってしまうでしょうね。
写真のように見えるというのは作品の本質とあまり関係ないことのように思います。

imgグラン・ビア 1974-81年 油彩・板

img実際の街の様子と作品の比較。驚きです・・・・

img写真を見て描いているわけではなく、実際に目で見て描いています。

一番有名なのが上にあるマドリッドの街並を描いた作品ですが、写真を見て描いているのではなく、実際に街に立って描いているのがすごいですね。。。
完成までに7年かかってます。
そして40年前の作品なのに、ほとんど街の様子が変わっていないのも驚きです。
ヨーロッパならではでしょう。
マドリッドはスペインの首都ですから、大都会のはずなのに変わっていない。
東京だとこうは行きませんよね。。。
40年前の建物は跡形もなく消えてしまいます。

imgマリアの肖像 1972年 鉛筆

imgトーレス・ブランカスからのマドリード 1974-82年 油彩・板 

このマドリッドの見下ろす風景も8年もの間描いています。
描いている途中で、どんどん街の様子は変わっているんじゃないでしょうか。
90年代にスペイン国王から絵画制作を依頼されていますが、既に20年くらい経過しているというのにまだ完成しておらず、4000万円を先に支払っている王室からプッシュをかけられているようです。(再度設けられた期限にも完成せず・・・)

ここには紹介していませんが、僕は単なる窓を描いた作品や冷蔵庫を描いた作品、部屋の白い壁だけを描いた作品が一番好きでした。
どこにでもある身近な情景です。
会場でこれらの絵を見ていて、僕はあることを思い出していました。
それはアメリカの作家、アンドリュー・ワイエスとの共通点です。
高校生の時に大好きだったワイエス。
この作家も機会があれば是非紹介したいと思います。

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