ハイブランドに共通するグラフィックデザイン

松本 知彦 for Private Time/2015.05.12/クリエータークリエーター

今の世の中、ライフスタイル、ファッション、インテリア、どの分野においてもリラックス、同時にクラシック回帰がトレンドですが、そんな中今は勢いが衰えてしまったようにも思えるモード系のデザインについて、あえて今日は話したいと思います。
モード系のラグジュアリーファッションのグラフィックと言えば、すぐに思い浮かぶのがVOGUE、ELLE、Harper's BAZAARなどの洋雑誌でしょう。
これらの雑誌を検証すると、いくつかの共通点があることに気が付きます。

imgこの2誌はタイトルに同じ書体を使っています。

まず雑誌の冠となっている雑誌名の書体です。
ELLEのタイトルはセリフ系(たぶんBodoni)で見出しはFUTURAで統一されていますが、VOGUE、Harper’s BAZAARのタイトルには同じDidot(ディド)という書体が使われています。
似た書体にBodoniがありますが、それよりも横ラインがさらに細く、洗練された印象の書体。
このDidot(ディド)は、フランスのフェルミン・ディド(1764-1836)によって作られた書体ですが、アルマーニのブランドロゴをはじめ、ラグジュアリー系のファッションデザインには必ずと言っていいほど登場する書体。
フェミニンで高級感があるデザインに用いられることが多いです。
たとえば、ラグジュアリー系のファッションを扱うセレクト系のオンラインストアNet a porter。
そしてファストなのに、著名モデルを起用してラグジュアリーなアプローチをしているH&Mのカタログにも多く登場しています。

imgそれはDidot(ディド)というフランス生まれの書体。

imgH&MのカタログにもこのDidotが多く使われています。

こうした定番とも言える、モードファッションにおけるお約束のデザインセオリーはいつくらいから登場したのでしょう?
その系譜を調べていくと、Fabien Baron(ファビアン・バロン)に行き着くはずです。
彼を避けては通れません。
ファビアン・バロンは1992年から1999年までアメリカ版Harper’s BAZAARのアートディレクターを務め、一躍注目されました。
Didot(ディド)が使われている雑誌タイトルのタイポグラフィも彼の仕事です。
アレクセイ・ブロドヴィッチがアートディレクションを手掛けた1930~50年代のHarper’s BAZAARは、ファッション誌のスタイルとデザインに革命を起こしたとも言われますが、彼が去ったあと平凡なファッション誌に成り下がってしまったHarper’s BAZAARを90年代に再び黄金期に導いたのがファビアン・バロンでした。
その特徴は大胆なタイポグラフィと構図、そしてケイト・モスを多く起用した一流カメラマンによるシンボリックな写真。
僕も当時リアルタイムで彼の仕事を見ていましたが、本当にカッコよかった。
正確に言うと、今見てもまったく色あせていない。

imgファビアン・バロン本人と彼の仕事の一部。カッコ良すぎ。

img大胆なフォントの組み方は神業です。

imgマドンナも。

ファビアン・バロンはHarper’s BAZAARのアートディレクション以外に、イタリアンヴォーグ、フレンチヴォーグ、アリーナオム、ウォーホールが創刊したインタビューなどでも、その手腕を発揮しています。
これまた一世を風靡した写真集マドンナのSEX、カルバン・クラインのグラフィックなども彼の仕事です。
個人的にはフレンチヴォーグのエディトリアルデザインは本当に秀逸だったと思います。
以後、たくさんのフォロワーを生み出しました。
今もよく見られるラグジュアリーなファッションのデザインセオリーは、彼が作り出したと言えるでしょう。
次から次へトレンドが移り変わっていくファッションにあって、その影響がまだ続いているというのはすごいことですね。
まさにオルタナティブなのではないでしょうか。

imgファビアン・バロンが手掛けた黄金期のHarper’s BAZAARとVOGUE。付箋はスタッフに見せるため。

先日、自宅から彼が手掛けたフレンチヴォーグや黄金期のHarper’s BAZAARを探し出し、会社に持って行ってスタッフ全員にその本を見せながらファビアン・バロンのことを話しました。
彼の仕事には学ぶべきことが本当に多いと感じているのですが、若いスタッフたちは興味があるのか、ないのか・・・う~ん・・・。
少しでも興味持ってくれたら嬉しいです、、、汗
こうした時代に大きな影響を与えたクリエイターの仕事を見ることは、本当に大事なことだと思っています。
今日はDidot(ディド)とハイブランドファッションのエディトリアルデザインの話でした。

img2013年にロンドンのデザインミュージアムで展覧会が開かれていた模様。日本にも来ないかなあ。 このタイポグラフィーの組みもDidotですね。

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