TATSUMI 2011

松本 知彦 for Private Time/2011.10.26/映画映画

以前にもこのブログで書きましたが、僕の父親はマンガ家でした。
マンガを職業にしている父親を持つという、他の家とは違う特異な家庭環境で育った僕は、良くも悪くもこの父から様々な影響を受けました。

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今から50年前、それまでのマンガとは異なる「劇画」という新しいマンガのジャンルが生まれます。
この「劇画」のジャンルを作ったのが辰巳ヨシヒロという作家。
彼は、当時同じく大阪で活動していた8人の仲間と、「劇画工房」というグループを結成して活動しました。
そのメンバーの一人が、現在ゴルゴ13で知られるさいとうたかをであり、うちの父親でした。
劇画工房の中でも当時売れっ子だったこの3人は、大阪で、そして東京の国分寺で、共同生活をしながら作品を描き続けました。
辰巳さんはその自らの経験を「劇画漂流」というマンガ作品にして発表し、それが2009年手塚治虫賞大賞、アメリカではアイズナー賞を受賞。
一躍、時の人となりました。

マンガ作品「劇画漂流」を映像化したのが、この「TATSUMI」です。
シンガポールのエリック・クー監督が長編アニメーション作品として制作し、カンヌ映画祭に続き、六本木で開かれている東京国際映画祭、アジアの風部門で上映されました。
外国映画作品ですが、劇中のセリフはすべて日本語です。

img東京国際映画祭への招待状です。

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img左から辰巳ヨシヒロさん、監督のエリック・クーさん、声優を務めた別所哲也さん

img辰巳さんと私

レセプションパーティと作品上映会に招待いただいたので、先日の日曜日「TATSUMI」を見てきました。
映画は5本の短編で構成されています。
僕は先にマンガで読んでいたので作品のストーリーは知っていましたが、動かないマンガが映像化されるとまた違う魅力があるなあと感じました。
辰巳さんがナレーションをしているので、ドキュメンタリーの要素もあり。
その中に父親も映像として出てきました。
そしてエンドロールにも。
日本での上映は未定とのことで、劇画同様この作品が国内で受け入れられるかどうかわかりませんが、1人でも多くの人に劇画について知ってもらえればと思います。

当日パーティ会場で、巴里夫こと磯島しげじさんにお会いしました。
父の友人で、少女マンガの第1人者です。
「辰巳さんは、まっちゃんが生きてたらもっとうれしかったと思うよ、彼は知り合いは多いけど友達は少ないから。」
そう、さいとうさん、辰巳さん、そして父、常に3人で行動する機会が多かった父親は、さいとうさんと辰巳さんが喧嘩をするたびに間を取り持つ役目だったようです。
映画の中でも3人のシーンが出てきます。
なんだか心に沁みました。

一緒にマンガを描いていた若き日の3人の作家。
劇画の功績が世界的に認められた辰巳さん、そしてゴルゴシリーズで国民的作家となったさいとうさん、2人の影に隠れて今では誰も知らない父。
でも僕にとっては、誰よりもかけがえのない父親なのでした。

img「劇画漂流」より 左からさいとうたかを、辰巳ヨシヒロ、松本正彦

松本正彦氏の「駒画」があったからこそ、「劇画」が生まれた。この事実は貸本マンガ史を語る時には、避けて通れない事実である。辰巳ヨシヒロ

小学館クリエイティブ「隣室の男 松本正彦駒画作品集」より

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