マタンゴ 1963

松本 知彦 for Private Time/2012.06.01/映画映画

ヨットで無人島に流れ着いた7人は、そこで難破船を発見します。
しかし、なぜか船内にある鏡はすべて割られ、乗っていた船員たちの姿はどこにも見当たりません。

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残された航海日誌から、船員たちは島に生えているキノコを食べて、次々と姿が見えなくなっていったという経緯を知ります。
やがて食料も尽き、極限状態の中、流れ着いた7人も1人また1人とキノコを食べ、そのうち体に変化が・・・。
世界中でカルト的な人気を誇るホラー映画です。

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中学生くらいの時テレビで見た記憶がありますが、あまりに設定が恐ろしく強烈に印象に残っています。
主題はキノコを食べて変化する人間(マタンゴ)ですが、はっきり言って50年前の特撮なのでここを期待してはいけません。
むしろ極限状態に置かれた人間のエゴ、心理描写に重きを置いて描かれているのが今でも評価されている由縁でしょう。

1960年代に作られた東宝映画ということで、当時怪獣映画にも出演している役者が多く顔を見せていますが、それぞれ味があるキャラ設定&演技で魅せてくれます。
中でも水野久美の色気はただものではありません。
そしてマタンゴ役で天本英世も出演。(仮面ライダーの死神博士役で有名ですね)
しかし当時映画館での同時上映が、同じヨットをテーマにした「ハワイの若大将」だったというのは驚きです。。。笑

タンタンの冒険 2011

松本 知彦 for Private Time/2012.01.16/映画映画

映画「タンタンの冒険」です。
タンタンは1929年からベルギーの新聞に掲載されていた漫画の人気キャラクター。
それをスピルバーグが映画化しました。

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映画は1本のストーリーになっていますが、実際には3本の原作から構成されています。
メインとなっているのは「なぞのユニコーン号」ですが、そこに「レッドラッカムの宝」、「金のはさみの蟹」の2つのストーリーが織り交ぜられています。

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実は僕はタンタン好きなのです。
大学生の時、バイト先の女の子から誕生日に本をプレゼントされました。
確か僕が似ているからという理由でしたけど、似てないですから(ウォーリーには若干似てますが、)たぶん雰囲気と当時の髪型のせいだろうと思います。
それが初めてのタンタンとの出会いでした。
もらったのは「黒い島の秘密」「不思議な流れ星」の2冊。
それから25年・・・僕の子供が本棚にあった古いタンタンの本を見つけて読み出し、今では本棚に全シリーズが揃っています。

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24話ありますが、最終巻が出たのはつい2、3年前のことです。
25年かけて全シリーズを出版する出版社もすごいですが、父親が女の子からもらった25年前の本を、息子が受け継いで全シリーズ揃えるっていうのも、なんだかおかしいですね。
初期の頃は、フキダシの文字は全部手描き文字だったのに、最近出版された本はデジタルフォントに代わっています。
比較すると、手描き文字の方が当然味があっていいですから、最後まで手描き文字で続けて欲しかったですね。
以前タンタンの日本語版の本を持って息子とスペインに旅行に行った際、街角でスペイン人から話しかけられたり、イビサ島ではタンタンのTVアニメもやっていたりして、世界共通なのだなあと感じました。
それが引き金になって帰国後にDVDも購入することになるのですが(吹き替え版あり)

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映画は登場するキャラクターの顔がとてもリアルです。
ハドック船長など造形は原画に忠実ですが、表情や動きはアニメを通り越して本当にリアル。
タンタンの顔だけはう~ん・・あんまり好きになれません。。。
そしてCGがスゴイ。
ほとんど実写を見ているようです。
技術的にこれだけスゴイCGを作れるようになったんですね。
しかし最新のCG技術を駆使して莫大なお金をかけて作られた映画を見たあとに感じるのは、やっぱり本が一番いいということです。
これには個人差あると思いますが。

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タンタンショップというのが世界中にあって、東京では代官山のヒルサイドテラス店によく行っていましたが、2年くらい前にクローズしてしまいました。
残念です。
今ショップがあるのは原宿だけです。

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妖怪人間ベム 1968-1969

松本 知彦 for Private Time/2011.12.26/映画映画

「それは、いつ生まれたのか誰も知らない。暗い音のない世界で一つの細胞が分かれて増えていき、三つの生き物が生まれた。彼らはもちろん人間ではない。また動物でもない。だが、その醜い体の中には正義の血が隠されているのだ。その生き物...それは、人間になれなかった妖怪人間である。」
有名なオープニングナレーションで始まる妖怪人間ベムです。
最近、テレビで実写版をやってたので見た人もいるでしょう。
クリスマスイブに放映された最終回、見ましたか?
アニメの最終回とちょっと似てました。
杏が演じるベラは、オリジナルアニメそっくりなんですが、ベムは原作だと50歳の男性で、亀梨という配役は疑問でしたが、怪物君同様ジャニーズ枠ってことでしょう。
アニメの内容はあまり覚えていませんが、放映当時リアルタイムで見たという記憶だけは残っています。

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どうしても、もう1度見たくなって、DVD BOXを購入してしまいました。
相当に怖い話だったはずですが、今見るとストーリーの前に絵が下手で、人物のデッサンが狂っているのが気になって気になって。笑
それが味と言えば味で、逆に怖いんですけどね。
脚本は国内で考えられたようですが、画は韓国で描かれて逆輸入したものらしいです。
そう聞くと、日本にはない無国籍な街並みやドギツイ色彩は、よくわからないながらもなんだか納得感があり。。

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オープニングと歌



ハニーナイツが歌う主題歌は最高です。
この主題歌含め、物語全編に使われているのがジャジーな曲で、これが今でもこの作品を古く感じさせない理由にもなっていると思います。
エンディングの曲だけは、子供向けド真ん中な歌で違和感がありますが、そういえばテレビでやってたベムもエンディングの曲、違和感ありましたね。
アニメのストーリーでは、犯罪者と金持ちの子供という設定がやたら多いです。
ベストは第3話「死人の町」です。
13日の夜になると街の子供が一人ずつ消えて行くという話なんですが、これがめちゃめちゃ怖い!
普段は優しい母親たちが、13日になると悪霊に取りつかれて子供たちを襲うのですが、それを救うために子供を毎回さらっていたのは夫たちだったという、どんでん返しも用意されていて、子供向けとはいえストーリーがよくできています。

そのほかにも、飛び出す目玉、転がる生首、地を這う手首、などなど恐ろしいシーン満載です。
ベム、ベラ、ベロの3人は3本指で、放送禁止用語もじゃんじゃん出てきますが、ディスクにはそのまま収録されています。
エライ。

唇からナイフ 1966

松本 知彦 for Private Time/2011.11.10/映画映画

女性版007とも言うべき60年代英国スパイカルトムービー。
当時の新聞に連載されていた人気コミックの映画化です。

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一応コメディ映画ということになってますが、まったく笑えるところはありません。
はっきり言って退屈で全くおもしろくない映画です。
唯一の見どころは、当時のスウィンギングロンドンのポップカルチャーの影響が至るとこに見られることでしょうか。

まず主役のモニカ・ヴィッティの衣装。
ロンドン、アムステルダム、ナポリなどで次々と衣装を変えて登場する彼女の魅力で、ギリギリこの映画はもっています。
僕は好きじゃないですけど。
そしてブリジット・ライリーか、バザルリかというポップアートで彩られたインテリア。
音楽、色彩、車、秘密兵器、ファッション、60年代の最先端ポップアートの要素が詰まってます。

俳優陣も豪華。
商業映画でも、娯楽映画でも、アート作品でもない、なのにお金をかけているなんだかよくわからないキッチュな映画。
今ならカルトなお洒落映画ということになるのでしょうが、ストーリーは本当に退屈極まりません。
1967年にピーター・セラーズが主演したカジノロワイヤルにも似ています。
60年代マニアにはたまらない映画でしょう。

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TATSUMI 2011

松本 知彦 for Private Time/2011.10.26/映画映画

以前にもこのブログで書きましたが、僕の父親はマンガ家でした。
マンガを職業にしている父親を持つという、他の家とは違う特異な家庭環境で育った僕は、良くも悪くもこの父から様々な影響を受けました。

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今から50年前、それまでのマンガとは異なる「劇画」という新しいマンガのジャンルが生まれます。
この「劇画」のジャンルを作ったのが辰巳ヨシヒロという作家。
彼は、当時同じく大阪で活動していた8人の仲間と、「劇画工房」というグループを結成して活動しました。
そのメンバーの一人が、現在ゴルゴ13で知られるさいとうたかをであり、うちの父親でした。
劇画工房の中でも当時売れっ子だったこの3人は、大阪で、そして東京の国分寺で、共同生活をしながら作品を描き続けました。
辰巳さんはその自らの経験を「劇画漂流」というマンガ作品にして発表し、それが2009年手塚治虫賞大賞、アメリカではアイズナー賞を受賞。
一躍、時の人となりました。

マンガ作品「劇画漂流」を映像化したのが、この「TATSUMI」です。
シンガポールのエリック・クー監督が長編アニメーション作品として制作し、カンヌ映画祭に続き、六本木で開かれている東京国際映画祭、アジアの風部門で上映されました。
外国映画作品ですが、劇中のセリフはすべて日本語です。

img東京国際映画祭への招待状です。

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img左から辰巳ヨシヒロさん、監督のエリック・クーさん、声優を務めた別所哲也さん

img辰巳さんと私

レセプションパーティと作品上映会に招待いただいたので、先日の日曜日「TATSUMI」を見てきました。
映画は5本の短編で構成されています。
僕は先にマンガで読んでいたので作品のストーリーは知っていましたが、動かないマンガが映像化されるとまた違う魅力があるなあと感じました。
辰巳さんがナレーションをしているので、ドキュメンタリーの要素もあり。
その中に父親も映像として出てきました。
そしてエンドロールにも。
日本での上映は未定とのことで、劇画同様この作品が国内で受け入れられるかどうかわかりませんが、1人でも多くの人に劇画について知ってもらえればと思います。

当日パーティ会場で、巴里夫こと磯島しげじさんにお会いしました。
父の友人で、少女マンガの第1人者です。
「辰巳さんは、まっちゃんが生きてたらもっとうれしかったと思うよ、彼は知り合いは多いけど友達は少ないから。」
そう、さいとうさん、辰巳さん、そして父、常に3人で行動する機会が多かった父親は、さいとうさんと辰巳さんが喧嘩をするたびに間を取り持つ役目だったようです。
映画の中でも3人のシーンが出てきます。
なんだか心に沁みました。

一緒にマンガを描いていた若き日の3人の作家。
劇画の功績が世界的に認められた辰巳さん、そしてゴルゴシリーズで国民的作家となったさいとうさん、2人の影に隠れて今では誰も知らない父。
でも僕にとっては、誰よりもかけがえのない父親なのでした。

img「劇画漂流」より 左からさいとうたかを、辰巳ヨシヒロ、松本正彦

松本正彦氏の「駒画」があったからこそ、「劇画」が生まれた。この事実は貸本マンガ史を語る時には、避けて通れない事実である。辰巳ヨシヒロ

小学館クリエイティブ「隣室の男 松本正彦駒画作品集」より

妖怪百物語 1968

松本 知彦 for Private Time/2011.09.14/映画映画

夏もそろそろ終わりですが、夏と言えば妖怪です。
ということで怖い妖怪映画を紹介します。
大魔神などでヒットを飛ばす大映が当時の妖怪ブームに乗って制作した妖怪3部作の1本。
怪談話を1つ話す度にろうそくを1本づつ消していく、江戸時代の百物語という催し物を題材にしています。

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百話の話が終わって最後のろうそくが消されると、本当の妖怪が現れるという昔からの言い伝えがあり、最後に必ず憑き物落としのまじないを行うことが百物語のしきたりとなっていました。
映画ではこれをしなかったために、次々と妖怪が現れるというもの。
たくさん登場する妖怪のキャラクターは水木しげるの妖怪画からデザインを起こしています。

この映画が作られた当初は相当に恐ろしかったと思いますが、50年経った現代ではそんなに怖くありません。
ストーリーも時代劇にありがちな悪代官と腹黒い商人VS善良で貧しい長屋の人々、そこに妖怪が出てきて悪代官たちを呪い殺すという勧善懲悪ものです。
シリアスなドラマなのですが、時代は変わったなあと感じます。

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img毛利郁子演じるろくろ首

ろくろ首役で出演しているのが毛利郁子。
この映画の翌年に殺人事件を起こして有名になった女優です。
妻子ある男性と7年間交際して子供をもうけた末、最後に相手を刺し殺してしまうという事件。
19歳でミス温泉に選ばれた後、やくざに監禁されてクラブで強制的に働かせられ、その後そこから救い出してくれた暴力団組長の2号を経て、26歳で女優デビュー。
凄まじい経歴です・・・・。
女優になってからは「座頭市」「眠狂四郎」など51本の映画に出演しています。
殺人を犯した現役女優というのは当時相当に騒がれたことでしょう。
それを知りつつ映画を見ると、彼女の演技にも常人離れした凄みのようなものを感じるのは気のせいでしょうか。。。
出てくるシーンを巻き戻して繰り返し見ちゃったり・・・。

「妖怪百物語」のヒットを受けて制作された「妖怪大戦争」もヒット。
ここでも毛利郁子は、またもやろくろ首役で出演しています。。。

北北西に進路を取れ 1959

松本 知彦 for Private Time/2011.06.15/映画映画

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ヒッチコックの傑作としてあまりにも有名な1959年の作品。
広告代理店に勤めるケーリー・グラントが別人に間違えられ、国際犯罪事件に巻き込まれていくというヒッチコックお決まりのサスペンスです。

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この映画のケーリー・グラントは相変わらずダンディです。
本当にスーツの着こなしがこれほど様になる人はいません。
無地に見えますが、よーく見るとモヘヤ混と思われる細かいグレンチェックのスーツに、ライトグレーのフレスコタイをしています。

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印象に残っているのはシカゴへ向かう列車の中で知り合う女性エヴァ・マリー・セイントとケーリー・グラントが食堂車で交わす会話。
このエヴァ・マリー・セイントという女優、もちろん役柄だからでしょうけれど、声のトーンも低く、しゃべり方も落ち着いていてクールです。
そんな女史が男性に積極的にアプローチしてくる食堂車のシーン、会話のキャッチボールが巧妙です。
山場は2か所、1つは何もない平原で飛行機にケーリー・グラントが襲われる有名なシーン。
そしてもう1つは歴代の大統領の顔が岩山に彫ってあることで知られるラシュモア山での格闘。
これがすべてセットで撮影されているというから驚きです。
当時CGはもちろんありませんでしたから。

バーナード・ハーマンのテーマ曲が映画を盛り上げるのに一役買っています。
タイトルデザインは巨匠ソウル・バス。
キネティック・タイポグラフィと呼ばれる動くタイポグラフィを世界ではじめて導入したのがこの映画です。
今ではFlashで学生でも作れる技法になりましたが、ソウル・バスがこの表現を最初に決定付けたと言ってよいでしょう。
グリーンバックに次々と直線が現れて交差し、そのパースの直線に沿って出演者のクレジットが白抜きで現れます。
交差した直線はそのままビルの窓枠の映像とぴったりと重なり、そこから本編がスタートするという、なかなか凝ったオープニングでしびれます。

http://www.youtube.com/watch?v=jIlqatMQSgI

img最後のシーンでバスに乗り遅れるのがヒッチコック自身です。

ガス人間第1号 1960

松本 知彦 for Private Time/2011.04.28/映画映画

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公開当時アメリカで続編が作られたほど世界的に大ヒットした東宝の特撮映画。
名作です.

やはり名作と呼ばれるものは映像だけでなく、ストーリーがしっかり練られていることが大前提。その意味でこの作品も特撮が脇に回り、人間の心理描写に焦点を当てた狂気のラブストーリーが主題となっています。

科学実験の結果ガス人間になってしまった図書館員を土屋嘉男、土屋の悲恋の相手として日本舞踊の家元に八千草薫。事件を追う刑事役に三橋道也が扮しています。
銀行強盗と落ちぶれた家元という意外な組み合わせが、非常に印象的です。
特に八千草薫の尋常ではない美しさが土屋の悲恋にリアリティを与えています。
踊りのシーンが何度も出てくるのですが、八千草薫って宝塚出身なんですね、
知りませんでした。
しかしこの時八千草薫は29歳、本当に綺麗です。

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ラストは、日本舞踊を踊る八千草薫がガス人間とともに劇場もろとも火災に包まれるシーンです。
特撮監督を務める円谷英一は、怪奇大作戦の「呪いの壺」で見せたような実写と模型をうまくつなぎ、火災のクライマックスを盛り上げます。
怪獣映画のように、いかにもそれとわかるチープな特撮ではなく、実にうまい演出です。
見終わった後は、真夏の就寝中、熱にうなされて起きてしまった時のような不思議な感覚に襲われる名作です。

怪奇大作戦 1969

松本 知彦 for Private Time/2011.04.13/映画映画

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1968年から69年にかけてTBSで放映された連続テレビドラマ。
ウルトラセブンに続いて、円谷プロダクションが制作した作品です。
カテゴリー的には特撮に入りますが、ウルトラシリーズより対象年齢を上げたこともあり、犯罪をテーマにした大人向けのドラマ作りになっています。
これがなかなか深い。
ストーリーにもよりますが、その内容は今見ても古さを感じさせません。

全26話中のベストは実相時昭雄が監督を務めた23話「呪いの壷」、そして24話「京都買います」の2本。
今も多くのクリエイターから名作と絶賛される作品です。
この2本がなければ怪奇大作戦の名前も、膨大な古臭いドラマに埋もれていたことでしょう。
ロケーション、シナリオ、映像、役者、どれを取ってもベストです。
特に岸田森の演技が素晴らしい。
ウルトラシリーズで見せた実相寺監督特有の凝ったカメラワークも随所に見られます。
この映像が超クール!!特撮だけではない円谷プロの人間ドラマ、そこに実相時監督の才能が遺憾なく発揮されています。

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フェルナンド・ソルのギターの音色に合わせて、京都を舞台に現代人の内面の移り変わりを捉えた「京都買います」。
そして人間の情念をテーマに、最後に焼け落ちるお寺の特撮が見せ場となっている「呪いの壷」。
どちらもテレビドラマの最高峰、素晴らしいの一言に尽きます。
今ではこうした作品は絶対に作れないでしょう。
機会があれば是非見てみてください。
僕のおすすめベスト1です。

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ウルトラセブン 第8話「狙われた街」 1967

松本 知彦 for Private Time/2011.02.23/映画映画

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あまりにも有名な実相寺昭雄監督のウルトラセブン第1回監督作品。
名作です。
ストーリーもそうですが、映像が本当にクール!
とても子供向けとは思えません。

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地球侵略をたくらむメトロン星人が煙草の中に赤い結晶体を仕掛け、それを吸った人々の脳を狂わせることで人間同士の信頼を徐々に失わせていくという風刺の効いたストーリー。
禁煙が広がった今ではあまりリアリティのない内容ですが、劇中で「人類の約半分は煙草を吸っている」というセリフが出てくるように、当時はたくさんの人が煙草を吸っていたのでしょう。(人類の半分は吸ってないと思いますが)

物語は北川町という町が舞台です。
飛行機墜落、列車衝突、タンカー爆発、次々と起こる事件の背景には、北川町に住む住民が何かしらの形で関与しているというところから物語は始まります。
墜落した飛行機のパイロットだったアンヌ隊員の叔父の葬儀のシーンが冒頭に出てきますが、ここからしてしびれます。
葬儀に参列した人々は最近次々に起こる不審な出来事の噂話をしていますが、主人公のモロボシダンは葬儀に参列しながらこの話に聞き耳を立てます。
このシーンを実相寺監督はダンの視点でカメラを長回しで演出していますが、実にクールです。
子供向けの番組なら直接的に飛行機を墜落させたり、タンカーを爆発させたりするシーンを見せそうなものですが、葬儀で集まった人々に語らせて間接的に暗示するというのは実に大人な演出ではないでしょうか。

そして煙草を吸って狂ってしまう人々の描写もドキュメンタリー映像のようでかなりカッコいいです。今見ても全く古さを感じさせないどころか、逆に新しさを感じます。

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それ以外にも
駅前にある煙草の自動販売機をアンヌとダンが見張るシーン。
ウルトラ警備隊のメディカルセンター内で隊員がシルエットのみで会話するシーン。
犯人を尾行して古いアパートに潜入したダンを待つアンヌ隊員の逆光のカット。
夕陽が映り込むドブ川でメトロン星人とウルトラセブンが対決するシーン。
すべてにおいてクールです。
メトロン星人が町を破壊して暴れまわる、いわゆる怪獣的なシーンは一切出てきません。
60年代にあってこうしたストーリー展開は子供向け番組ではかなり異質だったのではないでしょうか。

脚本:金城哲夫  
監督:実相寺昭雄  
特殊技術:大木 淳

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