タカミブライダル トータルブランディング1

松本 知彦 for Private Time/2012.12.19/仕事仕事

創業90年の老舗、京都に本社がある高見ブライダルがハワイに新しい結婚式場を建設しました。
自社でハワイに、土地から建物を建築するというのはすごいことですよね。
施設のオープンに当たり、紙のツールやWebサイト、スマートフォンサイトなどブランディング全般とシステム開発をdigでトータルに受注して制作することになりました。

img先日出来上がったばかりの印刷パンフレットの見開きページ

このプロジェクト、スケジュールがタイトな上に求められた要件の難易度が高く、担当したスタッフみんなが挑戦するプロジェクトになりました。

Web、カタログ、両方の構成案を固めて、それに沿ってハワイでロケを行い、最終的にWebと印刷物の両方に同じ感性価値をクロスメディアで落とし込む。
ブライダルなので当然、モデル、メイク、ドレス、カメラマン、コーディネーター、たくさんの人と一緒にモノを創り上げることになります。
海外挙式の分野は、紙媒体が顧客とのコンタクトポイントとして高いシェアを持っています。
そのため、イメージによる誘導を目的とした紙媒体のビジュアルがまず重要で、Webとスマホではマーケティングや問題解決、資料請求を行う機能を優先した作りが求められました。
撮影がクリエイティブの大きな比重を占めることは言うまでもありませんが、Webではコンテンツやコピーライトも、そして紙媒体からの流入を受けるメディアとしてのスマートフォンサイト、各デバイスを同時に更新できるCMS導入も重要な要件でした。
これらを限られた時間の中で、digがトータルに制作するという案件です。

imgThe Terrace By The SeaのPCサイト。

img

imgこちらは同時リリースのスマートフォンサイト

僕は20代の時からロケにはたくさん行きました。
事前にシナリオを書いて、撮影ディレクションの資料を作って、カメラマンと地方へ。
今僕たちが通常やっている仕事は、ロケは少なく、撮影から、いえ撮影の前からストーリーを組み立ててイメージを作り上げる仕事の割合は、そんなに多くありません。
この一連の流れを作っていくことは、広くクリエイティブディレクションの手腕が求められること、そのためにある程度のキャパとスキルが必要なこと、ロケにも行くので体力も必要なことは、経験上僕は知っていました。
しかし、今のスタッフにどうしても経験させたかった。
部屋の中にいてデザインすることも重要ですが、ゼロからストーリーを考えて色々な人と協力して、もしくは作りたい世界観を指示しながらモノを創り上げていくプロセスを、もっともっと経験してもらいたいと常日頃から感じていました。
素材が揃って最後に行う平面のデザインより、ゼロから考えたことを実現していく過程そのものこそがデザインだと僕は感じています。
1人のクリエーターとしてクリエイティブに正面から向き合う、非常に重要かつクリエーターには必要不可欠なスキルだと思っていました。

しかし普段から忙しくしているスタッフは、僕からのこの要請に難色を示しました。
普段経験できない大切な経験をさせようとする僕のリクエストよりも、目の前の業務の方を優先し、それを置いてまでしてロケには行きたくないというのです。
ある意味それは当たり前のことかもしれません。
わかっていました。
今までの僕なら、この仕事はすべて自分でやってしまったでしょう。
でも自分がやる番ではない。
会社のこと、組織のこと、そして一人のクリエーターとして育っていくために避けては通れないこと、この仕事をスタッフに経験させたいという想いが強くありました。
それを学んだ彼らが、それをまた誰かに教えていくようにならなければいけない。
それが僕が今まで社会で経験してきたこと、会社で学んだことでした。
経験しないと判断できないことが数多くあるのです。
人生には、仕事には必ずこういうシーンが繰り返しやってきます。
これを乗り越えていくたびに、自分が一歩階段を登っている、僕はそれを経験で知りました。
でも経験していく途上では、それなりの負荷が伴います。

今までのように僕がやってしまえば、スタッフに負荷はかからなかったかもしれない、でも非常に重要な機会を彼らから奪ってしまうことになる。
それは上に立つ者としてすべきことではない。
しかし業務負荷が高まった結果、彼らのモチベーションが下がり、最終的には退職に追い込まれてしまうかもしれない・・・・。
僕は葛藤していました。

今まで自分は何度もこうした局面を乗り越えてきましたが、今までそれが原因で去って行ったスタッフもいます。
しかし一方で、クリエイティブってそういうものだと思ってる自分もいます。
どうしても越えなければいけないことがあるのだと、自分は経験上感じています。
山を乗り越えたあと、水があふれそうだった自分のバケツが、振り返ってみると登る前より一回り大きいバケツに代わっている。
以前より、多く水が入るようになっているのです。
考える余裕ができるようになるのです。
これを知らなければ、難局を乗り切る的確な指示は出せません。
でもバケツが大きくなっているかどうかなんて、登っているときはホントに本人はわからない。
僕もそうでした。
過ぎたから言えることです。
どうやってスタッフに前向きに取り組んでもらえるようになるか、それが僕の課題でした。
でも・・・それを僕はうまく伝えられませんでした。
自分が苦労してきて身になったことを人にどのように説明すればいいのか、これは自分の課題ですね、むずかしい。。
しかし、このプロジェクトをがんばったスタッフは確実に一回り大きくなったと思います。

imgこちらもパンフレットの見開きページ

導入したCMSを利用したクライント社内で更新可能なWebサイト、スマートフォンサイトが先にリリースされ、先日印刷物であるリーフレットの納品も無事完了しました。
シナリオの組み立てから全体のストーリー構成、イメージコンサルティング、ページデザインとコピーライト、印刷物とWebのトータルデザイン、スマートフォンサイト構築、各デバイスに対応したCMS設計〜導入、そしてロケの日程調整や準備、カメラマンやコーディネーターなど関わるスタッフ全員の金額調整などなど。
業務は多岐に渡りました。
結果的に現在会社が持っている多くのナレッジをつぎ込んだプロジェクトになりました。
関わったスタッフみんなががんばって結果を出した、これは素晴らしい経験です。
この努力は担当スタッフの大きな糧となって、確実にバケツは一回り大きくなったと思います。
クリエイティブに従事する者なら仕事において、人生において経験しなければならないこと、そんなエポックメイクなプロジェクトだったと思います。

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