SPACE8のツールデザイン

松本 知彦 for Private Time/2013.05.10/仕事仕事

先日の記事にも書きましたが、ビルの3階に新しく作ったスペース8、そのツール類のデザイン制作に着手しています。
コンセプトは2つの異なる輪が交わる場所=8ですが、視覚的なイメージを決めなければなりません。

img塚田さんとの打ち合わせ。名刺と封筒2種類をお願いしました。

今回のVI(ビジュアルアイデンティティ)を考える上で最初から頭の中にあったのが、スタイリッシュでクールなイメージとは対極の、暖かい手作りのぬくもり感、アナログ感を出したいということでした。
digってスタイリッシュというイメージがあるみたいですが(決してそんなことはないのですが)、それとはまったく正反対の家内手工業的な手仕事の世界観が近いと思っていました。
インテリアも以前このブログで伝えたように、60年代のイメージ、工場の隣にある生産管理室みたいな感じで作り込んでいるので、VIもそれに合わせた形がいいなと思っていました。

そんな世界観を視覚的に具現化するために選択したのは、、活版です。
活版とはオフセット印刷などとは違って、1文字1文字バラバラの鉛でできた版を組んで圧をかけて印刷する技法です。
友人である大学の後輩にも手伝ってもらって、活版印刷ができる会社を探しました。
そこで探し当てたのが早稲田にある佐々木活字店です。
クリエイティブに従事している人ならご存知だと思いますが、活版の技法は一部の人の間で見直され、以前より見かけるようになりました。
とはいえ対応できる印刷所は少ない。

img大正8年創業。新宿区地域文化財に登録されています。

img保管されている膨大な量の鉛の活字

そして活版印刷ができる印刷業者でも、母型(ぼけい)と言われる真鍮で作られた原版(版を作るためのマスター)を持っている印刷所は少ないのが実情です。
この佐々木活字店はたくさんの母型(ぼけい)を持っています。

以前日本中にあった活版専門の印刷会社も今では少なくなってしまいました。
日本で使われるすべての文字、その母型を1社で何千種類も保管しておくことは不可能であり、以前は他の活版業者と連携して、お互い足りない母型を補って仕事をしていたそうです。
しかしその業者もどんどん消えて、佐々木活字店でも自社で保管している母型しか今はないとのこと。
活版印刷の会社が廃業すると、その会社から母型を買って揃えている会社が名古屋にあり、自社にない特殊な母型は、そこから取り寄せているとのことでした。
「活版印刷をやっているところでも自分のところで母型を持ってないため、他から取り寄せている業者も多いが、うちは母型を持っているので、すべて自分のところで版を作れる、だからこんなに低価格が実現できる。」とは工場を案内してくれた塚田さんの話。
なるほど。
確かにリーズナブルなのです。

佐々木活版店のような活版を専門に行っている企業にとって母型は命。
母型を手で彫る職人もどんどん少なくなり、その技術を持つ最後の人が昨年亡くなったそうです。
だから手による母型はもう作れない。
佐々木活字店が持つ母型は貴重なんです。

img工場の2階には活字を鋳造する機械がたくさん

img昭和23年製造の活字を鋳造する機械

img上)できあがった活字は文選箱に入れられます。下)左が母型、右側が鉛を流し込んで出来上がった活字(車のピクト)

活版の版には亜鉛版と樹脂版の2種類があります。
亜鉛版は350度の高温で鉛を溶かして母型に流し込んで、活版の版を作ります。
これを行っているのが昭和40年製の機械。
当然、製造メーカーは現在もうないので、同じ機械の1台を壊れた時の部品用にしているとのことでした。
2階にはこの版を作る機械が20台近くありましたが、一番忙しいときはここに8人の職人が毎日作業をしても終わらず、深夜まで仕事が及ぶこともあったとのこと。
以前は母型から作られた1文字単位の版を、原稿を見ながら職人が目で拾って文字組の版を作っていました。
ベテランになればなるほど組版を作る時間が早くなる。
1階ではそれを自動で行う機械を、次に社長になる予定の息子さんが動かしていました。
自動とは言え、これがまた相当にアナログな機械なんですが、今でもしっかり働いていて凄く興味深かったですね。
見ていてワクワクしました。

img上の赤枠の拡大が下の写真。穴の空いたテープのデータを読み取り文章通りに活字を鋳造、文選まで行う機械。

こんな体験ができる場所はないですね。
すべて圧巻でした。
工場の中を案内してくださった塚田さん、ありがとうございました。
皆さん、活版の技術を、そしてこの会社を残す意味でも、是非佐々木活字店に仕事をお願いしてください!
http://sasaki-katsuji.com/

とは言え、今回依頼したものはまだできていないので、完成は乞うご期待ということで、また報告します。

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