いつ見ても何度も溜息の出るクリエイティブワーク

松本 知彦 for Private Time/2015.05.27/仕事仕事

先日このブログで、Didot(ディド)という書体を使って、ラグジュアリーなファッションの分野でデザインの基礎を作ったアートディレクター、ファビアン・バロンの話をしました。
VOGUE、Harper's BAZAARなどのファッション誌で見せた彼の仕事は、本当に素晴らしいものでした。
ラグジュアリーなファッションの分野では、彼の影響を受けたデザインアプローチが続いており、たくさんのフォロワーが今も後を絶ちません。

imgルウ・ドーフスマンと言えばCBSでの仕事

今日は、ファビアン・バロンと同じくDidot(ディド)という書体を使って、世の中に素晴らしい仕事を残したクリエイティブディレクターの話をしたいと思います。
それはルウ・ドーフスマンという人。
以前このブログでも紹介しましたね。
大御所、亀倉雄策は彼についてこう語っています。
「作品というものは突き詰めれば人間性だと思う。 ルウ・ドーフスマンのデザインがその人間性を高くうたい上げていることに、私は感動しているのだ」
同じく田中一光先生もこのように言っています。
「ルウ・ドーフスマンのデザインや広告には、生々とした、洒落たマンハッタンが浮かぶ。
まるで、映画のジャック・レモンやシャーリー・マクレーンが声を掛けてくれるような、ニューヨークの臭いが漂っている」
このように大御所たちを唸らせる彼のデザインとはどんなものだったのでしょうか。

img並んだ本のように組んだタイポグラフィ。ウィットがあって洒落てます。1961年

imgこちらも1961年の広告。競合のテレビ局NBC、ABCより、もっともコメディ番組が面白いのはCBSだという広告。洒落ているのにカッコいい。タイポグラフィーも秀逸。

imgこちらもラジオを聞きましょうというコンセプトの広告。Didot使ってます。

ルウ・ドーフスマンは、アメリカの大手テレビ局ネットワークCBSの副社長であると同時に、クリエイティブディレクターを40年間務めた人。
長年に渡って同社の企業イメージを創り上げてきた人なのです。
特に同社において1960年代~70年代にドーフスマンが手掛けた自社広告の仕事は素晴らしい。
印刷、TVCM、パッケージ、フィルムタイトル、装丁、DMなどの分野でニューヨーク・アートディレクターズクラブから13の金メダル、23の栄誉賞が贈られています。
その特徴は、簡潔なコピーとシンプルなビジュアルにあります。
極めてシンプルで明快な表現なのに、見る人を唸らせる力がある。
余計なものを削ぎ落とした表現は、深い思考から生まれていることを感じさせるデザインなのです。
英語がわからない日本人でもビジュアルを見れば、何を言いたいのか伝わってきます。
毎回、いつ何度見ても、そこには新しい発見があり、何度もため息が出てしまう。
自分にとって、バイブルのような仕事です。

imgドーフスマンが手掛けた書体「CBS Didot」

img「CBS Didot」を使ったビルのサイン、エレベータホールから時計まで。

彼の仕事の集大成は1966年に完成したCBSの本社ビルでしょう。
建築はエーロ・サーリネン、インテリアデザインはイサム・ノグチ、トータルのクリエイティブディレクションはルウ・ドーフスマンという、巨匠たちの夢のようなタッグによってビルは完成します。
ここでドーフスマンは、フリーマン・クロウに依頼して作った書体「CBS Didot」をビルのあらゆるところで使いました。
現代ではそれほど珍しいことではなくなりましたが、このように建物を含むトータルな企業ブランディングを創り上げた事例は、1966年以前ほとんどなかったのではないでしょうか。
まさに歴史的なコーポレートブランディングの起点なのです。

imgコンピュータがないので全部手描きです。でもこういうプロセスが重要。

ビルの1階カフェテリアの壁面にある、1450以上の文字で食べ物の単語を並べた10メートルにも及ぶタイポグラフィの作品は圧巻です。
この時代、当然コンピュータなどありませんから、アイデアはすべて手描き・・・
このタイポグラフィの作品を復刻させるプロジェクトが始まった矢先の2008年10月28日、ドーフスマンは90歳で亡くなってしまいました。
天才的な表現者でありながら、会社の経営者であり、鋭い嗅覚とディレクションの力を持っている。
こういう人に僕もなりたい。。。

以前ヴィンテージショップで彼の作品集の初版を見つけて購入しましたが、もう1冊、アポロ13号の月面着陸をテーマにした「ムーンブック」という本が有名です。
こっちはさらに高くて、、、、でも今度見つけたら気合いを入れて買いたいなあと思ってます。

imgこのオジさんがルウ・ドーフスマンご本人。

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