ポパイに見る雑誌デザインのトレンド1

松本 知彦 for Private Time/2015.07.08/仕事仕事

前回のブログではフォントについて掘り下げるために、男性ファッション誌のデザインを例にあげてフォントの今を知った上で、センスを磨くことの訓練、思考プロセスについて書きました。
今回はその続きです。

imgこれでもかっていうくらいイラストを多用したポパイ最新号。

記事の中で、雑誌で世の中に影響力を持っているのは当然発行部数の多い雑誌であり、そのデザインを調査すれば今の流れが掴めるはずと書きましたが、男性ファッション誌で、今もっとも支持されているのはどの雑誌なのでしょう?
日本雑誌協会が公式に発表している雑誌の発行部数を調べてみました。

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やっぱりポパイってスゴイですね。
これより発行部数が多い雑誌として、MEN’S NON NO 13万部、Safari 19万部などもありますが、自分の感覚的にはあまりピンと来ません。
内容が面白ければ売れるはずなのですが、内容の面白さと売上の関係はそんなに簡単ではない。
雑誌でも店でも、すべてに共通していると思いますが、一番イケてておもしろいと感じる状態は、世の中に広く認知される直前、全国津々浦々に広がるちょい手前の状態です。
東京で一番おもしろくて売れているものが、全国区で売れているとは限らないのです。
だから部数だけで見ることは間違いのように思います。
個人の感性と部数を掛け合わせて市場を見た方がよいのです。
個人の感性というのがやっかいですが、それを磨くことは対象を注意深く観察して分析し、自分なり導き出した結論を常に持っていることが必要です。(前回のブログ記事参照)

さてちょっと話が逸れましたが、今回はポパイの話です。
たぶんこの雑誌は、全国区で売れているわけではなく、売り上げの上位は都市部、特に東京近郊に集中していると思われます。
ポパイの売上の推移も、前述の日本雑誌協会のサイトで調べてみました。
結果、おもしろいことがわかりました。

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今の状況と比較するために、ここ最近7年間における4~6月の3ヶ月の推移を見てみました。
2008年から発行部数は減少の一途を辿っています。
3年後の2011年には半分にまで落ち込んでいたんですね。
いくら出版不況と言っても、たった3年で部数が半分にまで落ち込むというのはよろしくない状況です。
ところが2012年の4~6月で回復し、その後は毎年倍々ゲームで発行部数を伸ばしているのです。
2012年の4~6月の間に何があったのでしょうか?
これも調べてみました。笑

2012年の6月号(5月発売)で誌面を大きくリニューアルしていました。
ここでポパイは、今に続く「シティボーイ」というコンセプトを打ち出します。
シティボーイ・・・80年代にポパイで僕たちが習ってきたコンセプトの復活ですね。
コンセプトは同じでも内容は2010年代の今にバージョンアップされています。

imgリニューアル前の2012年5月号

imgまったく異なるリニューアル後の6月号

表紙だけ見ても伝わってきますね。
リニューアル前の2012年5月号は、スポーツプレッピー特集としてトム・ブラウンを表紙に持ってきています。
この頃は、ブランド切りで高級なハイファッションを紹介する記事がメインだったように記憶しています。
デザインも全面に写真を配置し、見出しゴシック1本で、モード寄りのデザインです。
しかし、リニューアル後の6月号ではモードの要素は消え、身近な物をキリヌキで並べた表紙に。
ここでポパイは、高級なブランド志向の「スタイルブック」とは別れを告げ、「モノ」を主軸とした編集構成に大きく舵を切ったのでした。
商品のキリヌキと手描きのイラストを組み合わせた表紙デザインも、下手をしたら安いカタログか?と思われそうですが(今は見慣れていますけど)それまでにはなかったアプローチです。
この号から編集長はブルータスの元副編集長、木下孝浩氏に変わっています。
この木下さんという人は、ブルータス時代にも社内の反対を押し切って表紙にイラストを持ってきて最高販売部数を叩き出した人のようです。
時代を読むとはこういうことですね。
ここからポパイの快進撃が始まるのです。

次に続く

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