ポパイに見る雑誌デザインのトレンド2

松本 知彦 for Private Time/2015.07.10/仕事仕事

前回の続きです。
フォントの話を色々してきて、1つ前ではポパイを取り上げました。
ポパイの快進撃は、編集もさることながら、デザイン要素もその成功とは切り離せないと思います。
他の雑誌にはない独自のデザインは、カルチャー面からの大きな影響を受けたものです。
それは従来のエディトリアルデザインのセオリーとは異なる、新しい時代のデザインを感じさせます。
そんなポパイの誌面デザインについて今回は簡単に触れたいと思います。(ホントに簡単ですが)

img商品キリヌキとイラストを組み合わせた表紙が多いです

コーヒー、ブルックリン、チョークアート、サーフィン、ポートランド、日用品、ビンテージ、ハンドメイド、オーガニック、クラシックなどなど、カルチャーを形成しているこれらの要素が、ポパイの誌面には随所に取り入れられています。
前回も書きましたが、それらはハイブランドとは真逆の、手作りのカルチャー、むしろフリーペーパーのデザインに近い。
イマドキに言うところのzineですね。
学校で教わる雑誌デザインのセオリーから逸脱しそうなくらい自由で、作り手と読み手の距離が近い、同じ目線のデザインになっています。
意図的にそうしているのだと思います。
早速検証していきましょう。


まず雑誌の中で、これだけイラストを挿入している雑誌は他にないでしょう。
そのほとんどが手描きです。
中面だけでなく、表紙にも大胆に起用しています。
女性誌だと同じマガジンハウスが発行するGinza誌上にイラストレーターの姉妹ユニット、ストマクエイクのイラストが多く掲載されていますが、それでもここまで多くはないでしょう。
ポパイでは特定の1人のイラストレーターだけではなく、色々なテイストを持つ手描きイラストが毎回導入されていることも特徴です。
その1人がナイジェルグラフ。
海外のユニットみたいですが、日本人のデザイン事務所です(個人事務所?)。 
彼のイラストだけで表紙を構成した号もあります。
かなりインパクトがあったので、この号はみんな覚えているのではないでしょうか?

imgナイジェルグラフのイラストを全面に使用した2014年4月号の表紙

img彼の仕事は書籍やniko and…のファッションなど

imgストマクエイクのイラストを使ったローリーズファームのカタログマップ

もう1つは手描きフォントによる見出しです。
前々回のブログ記事でも紹介しましたが、これだけ多くの手描きフォントを使っている雑誌は他にないと思います。
タイトル見出しを手描きにするということは、それだけ手間がかかるのです。
こちらも表紙から積極的に導入されています。
たとえばサインペインターの金子裕亮。
この人も今の時代のテイストにドンズバです。
平成の時代に、サインペインターという職業があるっていうのがオドロキですけどね。
日本語にしたら看板屋ですが、、笑 

img金子裕亮による表紙のハンドタイポグラフィー

img金子さんの仕事。もうこれ、、言うことないですね。今のトレンド直球です。

彼らに共通するのは桑沢や多摩美など美術学校で学んだあとデザイナーとして出発し、その後絵を描くことを選択しているということ。
どちらもエディトリアルに縛られず、音楽系の仕事をしたり、ハンドペイントだけでなくデザインも同時に手掛けているということでしょう。
そういう意味では多摩美や芸大を卒業してデザインとイラストの双方を手掛ける湯村輝彦、河村要助と同じです。
今気が付きましたが、これも80年代のリバイバル???

imgもう1つ金子さんの仕事。これぞサインペインター!笑。トッドスナイダーも。

これら色々な時代のエッジーな要素を搭載しつつ、編集をより魅力的に見せるデザインの工夫をポパイは怠っていないのです。
ここ2、3ヶ月の間にブログで書いていたことがオンパレードで出て来てますね。
モードに勢いがなくなった今、「モノ」としての商品の存在価値を、編集とデザインの力でより魅力的に見せる工夫があるように思います。
ただ商品だけを見たい人にとっては、毎ページ出てくるたくさんのイラストや手描きの見出しは邪魔かもしれません。
しかしそれが他誌との差別化であり、手間をかけた分ポパイの味になっています。
そして膨大な取材の本数と他誌の追随を許さない圧倒的な情報量は、毎回スゴイなと思いますねぇ。
時々まったく興味のない特集もありますけど 笑

こうしてポパイの細部を点検していくと、たまたま発行部数が伸びたのではなく、デザインにも確信的な企みがあることがわかります。
他にもページのレイアウトやタイトル、ノンブルに至るまで、固定のデザインフォーマットを持たず、毎号デザインの細部には様々な工夫があるのですが、それを検証して取りあげるとキリがない&誰も興味ない笑 と思いますので今日はこの辺で。
皆さんも見てみてください。
繰り返し言いますが、こうした世の中で注目されているものの背景にある企みを検証する視点を常に持ちながら、自分に取り込むことはクリエーターとして必要なスキルだと思います。

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