思い入れのある雑誌が休刊に・・・1

松本 知彦 for Private Time/2015.11.25/仕事仕事

今から13年前、はじめて雑誌の仕事に深く携わる機会がありました。
それまで何十万部も売れている雑誌の仕事もしていましたが、特集単位のページデザインが主で、表紙含めて丸ごと1冊の仕事ではありませんでした。
1冊通してアートディレクションから、すべてコントロールすることを任せられたのが、「Think!」というビジネス誌だったのです。

img13年間、モチーフはすべて自前で用意して撮影しました。このオリベッティも。

独立して間もない頃、コンペでHMVの仕事を受注しました。
期間も長く、大きな仕事だった。
そこで仲良くしていただいたHMVの部長の方に、「ある出版社から今度新しく創刊する雑誌がある、今デザイン事務所を探しているからやってみない?紹介するよ。」と言われたのがきっかけです。
表紙含め、当時雑誌1冊を丸ごとデザインした経験はありませんでしたが、いつものように好奇心だけはあって、是非やらせてくださいと即答して話を進めてもらいました。
新しく創刊される雑誌は「Think!」という名前であることを、初めて訪れた東洋経済の会議室で聞かされます。
編集長と面談を重ねながら、この仕事をまかせていただくことになり、はじめて丸ごと表紙のアートディレクションから中身のページデザイン、DTPの組版まで、すべてを担当する仕事がスタートしました。

img創刊号でデザインした雑誌のロゴ。13年間お疲れさまでした。

img創刊号は一番左。最初は編集部から著名人の顔で、という指定がありました。

最初に、雑誌の顔とも言うべきロゴマークを考案しました。
ここまではよかった。
やっぱり初めての仕事はそう簡単にはいきませんでしたねえ。
その頃会社にスタッフは10人ほどしかおらず、紙のデザイン専門の部署自体が社内にはありませんでした。
デザインはできても200ページすべてを組むには、スタッフの数が足りない。
だから派遣スタッフを入れて作るしかありませんでした。
創刊号は派遣スタッフと松本の2名でやりましたが、3日間の徹夜が待ち受けていました。
よくそんな体制で仕事を請けたと思いますが、やりたい仕事に対するガッツだけはあった。
3日間72時間まったく寝ないと、3日目にはご飯もほとんど食べられなくなり、身体がおかしくなります。
でもその派遣の彼が本当によくやってくれました。
涙が出そうだった。
なんとか創刊号は無事に書店に並びました。
同時に新聞広告、プレスリリース、横断幕、DMなどの販促物もトータルでデザインしました。

img5色印刷で写真とイラストを組み合わせたシリーズ。これで賞をもらいました。全部僕の手ですが 笑

imgダブルトーンで処理したプロダクトシリーズ。毎号のモチーフ探しは大変だった。

さすがに毎回こんなに徹夜するのは無理だと思って、2号目から紙専任のデザイナーを採用したんですが、それでもしばらくは毎号徹夜が続きました。
でも毎号デザインをゼロから作れるのが楽しかった。
創刊号からだったので前任の会社もないし、自分たちがビジネス誌の分野を開拓するんだという強い気持ちで、毎回試行錯誤を重ねながら誌面作りに臨みました。
そのうちデザインだけでなく、コーナーの企画立案、編集、取材撮影まで任せていただき、自分たちの連載コーナーまで持たせてもらいました。
どこかで手を抜こうと思えば抜けるのに、それをあえてやらず、デザインフォーマットを毎号変えたり、本当に気合いが入ってたなあ。(だから徹夜になったという面もありますが・・・)
おかげでビジネス誌の分野で色々な方に認知され、カッコいい、ああいう雑誌が作りたい、という評価を各方面からいただいて、「Think!」みたいに作って欲しいというオーダーも他社から複数いただきました。
編集会議の誌上で岡本一宣さんから(大御所!)表紙デザインに対して優秀賞をいただいたりもしました。
辛いけど楽しかった。
今では「Think!」以外に、うちの会社で表紙含め丸ごとデザインしている雑誌は複数ありますが、すべてはこの「Think!」からはじまったのです。
そう、あの創刊号の3徹からはじまりました。
だから「Think!」は自分にとって非常に思い入れの深い雑誌でした。

img新宿伊勢丹に自分で企画を持ち込んで、ビジネス×ファッションというテーマでシリーズ化。

img思い返せば、こういうデザインカンプを10年間で何十案も作りましたねえ。

そんな「Think!」だったんですが、別れは突然でした。
創刊から13年目で休刊することが決まったと編集部から突然告げられたのです。
とっても残念でした。
でも他の事務所に仕事が移るのではなく、創刊から休刊までずっとうちでやり続けられたのはよかったなあと思っています。
今書店に並んでいる号をもって休刊になります。

でも僕が試行錯誤したDNAは今のスタッフに受け継がれているはずです。
3徹はしなくてもいい。いやしない方がいい 笑
でもリスクを取らないと、成長もないということは知っておいて欲しい。
今度は彼らが同じように高い山を目指して、これからやってくれるはずと信じています。

profile

recent entry

category

archive

saru

ページトップ
表示切替:モバイル版パソコン版