COMPLETE WORKS / 青木淳

松本 知彦 for Private Time/2014.03.12/本

最近この先生の名前もあまり聞かなくなりましたね。
というか熱烈な建築ブームが去って、市場は変わりました。
狂ったようにファッション企業が次々と有名建築家に自社ビルやブティックの建設を依頼するブームは去りました。

img全37作品、220枚を超えるカラー写真で構成

この作品集を買ったのも建築ブームの時でした。
スイスからやってきたヘルツォークが手掛けたプラダ、妹島和世+西沢立衛によるSANAAのディオール、伊東豊雄のトッズ、黒川紀章の日本看護協会ビル、隈研吾のLVMH、オランダの建築ユニットMVRDVのジャイル、そして安藤忠雄の表参道ヒルズ、2,3年の間に表参道はあっと言う間に建築ストリートになってしまった。
その中の1つ、ルイヴィトン表参道のコンペを勝ち抜いた青木淳先生は、華々しくヒーロー建築家としてフロントラインに出てきました。
この本を買った理由も、ルイヴィトン表参道のコンペを獲った時の提案書が限定の付録としてついていたからでした。
メディアもこぞって取り上げて取材記事を掲載していたのに、今建築家を掲載する記事はほとんどありません。
東京オリンピックの競技場の設計コンペで1位を獲ったザッハ・ハディットの話題すら雑誌にほとんど出てきませんからね。
建築よりも取り上げられるのは、建設にかかる気の遠くなる予算のことばかり。
もう建築と社会の幸せな、人々を建築で魅了してワクワクさせるような関係は終わってしまったんでしょうか?
そもそも最初からそんなものなかったんでしょうかね。

imgルイヴィトン表参道は、積み重ねたトランクがコンセプト。

僕は商業施設よりも住宅のプロジェクトの方に興味があります。
1人の施主の要望に耳を傾け、その課題をどのように解決して建築を成立させるかという明確な主題があるからです。
どのくらいの初期投資でその後の回収が可能か、という商業建築の考え方と決定的に異なる点でしょう。
住宅は建築を消費の仕掛けに利用していないからおもしろいのです。
青木淳先生の作品もそうで、三角形の敷地に建つ住宅や波板ガラスを外皮として採用した住宅建築が好きです。

青木淳先生は有名建築家の登竜門、磯崎新のアトリエ出身。
丹下健三、磯崎新という東大建築家直系の系譜にあります。
医者もそうですが、建築家もデビューする上で、こうした出身大学=学閥がかなり重要なのです。
そういう派閥の考え方はまったく好きじゃないですが、建築家の作品が卒業した大学によってある傾向があるのは見ていておもしろいです。

img青木先生による青森県立美術館

建築が現代美術に接近していったのもこの頃でしたね。
青木淳先生はこのあと青森県立美術館の設計コンペで1位を獲得、新潟のビエンナーレなどに参加していくのです。(2位を獲った藤本壮介にも相当な注目が集まりました。)
そして自らも現代美術のキュレーターの女性と再婚(以前の奥さんは、ドコモのiMODEを発明した人だったと思います)
あれからさらに社会は複雑になった気がします。
そうした社会状況を背景に、建築表現は次の世代へ、青木淳の弟子の乾久美子、隈研吾の弟子の中村拓志、伊東豊雄の弟子のヨコミゾマコトたちにバトンは渡されていったのでした。

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