死をテーマにした絵本「かないくん」

松本 知彦 for Private Time/2016.11.10/本

みんな知っているであろう絵本。
僕もこの本が出た当初に買いました。
でも別に子供のために買ったのじゃない。
自分で読むために買いました。

img裏表紙は真っ白で、それを見つめる表紙に描かれた主人公。

テーマは「死」について。
ストーリーは谷川俊太郎、絵は松本大洋、企画は糸井重里。
帯にもあるように、谷川俊太郎が一晩で書いたストーリーに、松本大洋が2年かけて絵をつけたというもの。
これがですね、よいという表現が適切なのかどうかわかりませんが、読んだ人にじわじわ問いかけてくる、考えさせられる内容なのです。
主人公のおじいちゃんが孫に語る、自分が小学校の時、隣に座っていたクラスメイトの友達が亡くなった話。
その友達の名前が「かないくん」です。
孫はおじいちゃんの話を聞いて、死について考える。
それははじまりなのか、終わりなのか。

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imgトレーシングペーパーが使われている扉をめくると、誰もいない教室に。

老人から次の世代に語られる死というテーマ。
かないくん、老人、孫の順番で、必ずやって来る死。
しかし、死ぬことの先について、本の中には書かれていません。
不明瞭でぼんやりとしている。
読んだ人各自が考えるようになっています。
ストーリーは谷川さん自身の経験を元にしているのは明らかでしょう。

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imgかないくんが亡くなったあと悲しむ同級生も新学期になると忘れたように。

肉親に限らず、周りの人の死というものは、ある年齢になればみんな経験していると思います。
僕も去年、仲のよい友達を亡くしました。
それを考えるとき、単なる寂しいという感情だけでは説明できない、本と同じように言葉にできない独特の感情があります。
それはもちろん、友人を亡くした喪失感だけではなく、僕にも必ずやってくるということも含めて。
本の中では、かないくんが亡くなったあとクラスメイトたちは嘆き悲しみますが、新学期になると、かないくんがいたことを忘れたかのように普通の生活に戻っていることに、子供だった頃の老人は違和感を感じるシーンが出てきます。
後半~ラストでは同じように、老人が亡くなったことをスキー場で知った孫が、何もなかったようにスキーを続けながらおじいちゃんのことを考える、というシーンが用意されています。
白い雪=空白というのが、主題のメタファーとして使用されている。

img日本画のような絵にまったく文章のない見開き。

本から伝わってくるのは少ない文章量と構図による、間のようなもの。
行間や絵の余白が読者に語り掛けてくる表現。
結論を明確にしないのと同じように、死によって生じる空白を伝える表現になっていると思います。
前半は老人の絵本作家が主人公ですが、後半は孫の女の子が主人公に変わって、2部構成になっています。
前述の雪を表現するために、白インクを使って6色で刷られているところにも白=空白の表現にこだわりが感じられます。
裏表紙をあえてISBNやバーコードを印刷せず真っ白にしたり、よく見ると単なる白ではなく、PP加工をマットと光沢で切り替えたり、装丁も凝ってます。

imgおじいさんは、ホスピスに入るとき、死の先を孫に暗示させます。

かないくんは子供が読んでもあまりピンと来ないかもしれません。
大人は読めば必ずそこに感じ入るものがあるでしょう。

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