COWBOY KATE / Sam Haskins

松本 知彦 for Private Time/2013.12.04/本

ちょっと前、ELLEを読んでいたら、今年の秋冬は60年代が流行ると書いてあって、そうなのかと。
でも毎年のように60年代が流行ると書いてあっても、流行った試しがないので眉唾だと知りつつ、でも英国ブームに60年代テイストがプラスされると、個人的には嬉しいトピックだなあと思ってこの記事を読んでいました。

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imgこいつは名作ですから、立ち読みの価値あります。

その記事を読んだ後に、本棚から引っ張り出して、もう1度見たくなった写真集があります。
サム・ハスキンスです。
主に60年代に活躍した彼は、1965年に出版した『COWBOY KATE 』でその名を決定的なものにしました。
僕が持っているのは2006年の再版のもの。
以前カウブックスかどこかで、オリジナル版を見つけて、その時は再版が出る前だったから買おうかどうしようか、かなり迷った末結局買わなかったのですが、そのすぐあとに再版が出ました。
オリジナルは3万くらいだったと思います。

img唯一の問題はモデルがあんまり可愛くないということ(そこそこ致命的? 笑)

『COWBOY KATE 』はモノクロで主に女性ヌードをテーマにした写真集ですが、これが今でもファッションジャンルのクリエーターたちに大きな影響を与えています。
今見てもあまり古く感じない。
今の写真と手法はずいぶん違うけれど、そこにはストーリーがあって映画的です。
銀塩特有の粒子が見えるモノクロの画像はドラマチックな明暗で構成されていて、レイアウトのデザインも秀逸なので勉強になります。
通常アートディレクターが行う仕事=写真のチョイスや配置、組み立てで流れを作る作業を、ハスキンス自身が行っているのが特徴でしょう。
様々な組写真で異なるモチーフを同一ページに配置したり、たぶん撮影する時からページ割りのデザインを考えて撮影していると思われます。
構図がカッコいい。

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imgストーリー性のある組み写真がカッコいい。

調べてみたら彼は南アフリカの人なんですね。
60年代に南アフリカで写真家を志して、のちに世界的なカメラマンになるなんて、なんだか変わった経歴です。
クリエーターにはありがちですが、奥さんの敏腕なマネージメント力が彼を世界的なカメラマンに押し上げた理由の1つでしょう。
写真集の版型は大判ですが、家に1冊あるといいですよ。

SAVILE ROW / James Sherwood

松本 知彦 for Private Time/2013.07.22/本

大型本です。
かなり大きい。
その名もサヴィルロウです。
サヴィルロウとは英国ロンドン中心部にある200mくらいの短い通りの名前。
この短い通りが、今でも世界中で着られているスーツ発祥の地と言われています。
なんと言っても背広の語源という説もある通りですからね。(セビロ=サヴィルロウ)

imgトム・フォードもサヴィルロウで何度もオーダーしています。

プロローグはトム・フォードの言葉からはじまります。
ついこの間、日本でもサヴィルロウの本が出版されましたが(こちらはイマ1つの印象)、それとは異なる構成で、1つ1つのブランドを掘り下げる内容となっています。
僕がこの本を買った理由は、もちろんクラシックなビスポークテーラーの歴史を知りたい、という理由ではありません。
新旧入り混じった現在のサヴィルロウをビジュアルで見たいという理由と、クラシックとは対極にあるサブカルチャーと結びついて、スーツが変遷していった経緯を知りたいというのが大きな理由です。
冒頭、サヴィルロウ一番地にある老舗テーラー、ギーブス&ホークスの前で、サヴィルロウに店を構えるテーラーやオーナーたちが一堂に集まって撮影された写真が見開きで掲載されています。
この写真がちょっとバカみたいで、おもしろい。
その集合写真の中心でサングラスをかけて写っている人物、、、この人のことはあとで紹介しましょう。

imgサヴィルロウの中心人物のように真ん中に写っているこのおじさん。

さて200メートルくらいしかないこの通りが、なぜにこれほど有名なのかと言えば、スーツの聖地としてオリジンを創り上げてきた伝統的な古いテーラーが現在でも同じ場所で営業を続けているからです。
その代表的な店として前述のギーブス&ホークスと同じく、1806年創業のサヴィルロウ最古のテーラー、ヘンリープールがあります。
このヘンリープールは白洲次郎がスーツをオーダーした店として知られていますが、この本にはヘンリープールで誂えた?スーツ姿の昭和天皇の写真が掲載されています。

img1921年に撮影された昭和天皇(一番左)は白いウェストコート(ベスト)を着用

そしてハンツマン。
こちらは1849年創業。
ジャケットが1つボタンのハウススタイルを頑なに守っているテーラーです。
ヒッチコック監督の映画「北北西に進路を取れ」で主演のケーリー・グラントが着用しているスーツは、同じくサヴィルロウにあるテーラー、キルガーフレンチ&スタンバリー(生まれ変わった現在のキルガー)でオーダーしたもの。
カッコイー!

imgキルガーフレンチ&スタンバリーのスーツを着たケーリー・グラント(1946年)

そしてビートルズやミック・ジャガーのスーツを作っていた伝説のテーラー、トミー・ナッタ―も紹介されています。
ビートルズのアルバム「アビイ・ロード」のジャケットで横断歩道を歩くメンバーのスーツのうちの3着はこのトミー・ナッターがデザインしたものです。
そしてビートルズが4人で最後のライブを行なったのも、このサヴィルロウにあるアップルのビルの屋上でした。

imgトミー・ナッターはスーツをクラシックから開放しました。エルトン・ジョンのスーツも彼のデザイン。

img上:サヴィルロウにあったアップルの屋上での最後のライブ。この時ジョンとポールが着ているのは、トミー・ナッターのスーツ。(1969年)下:トミー・ナッターでオーダーしたスーツを着てハネムーンに出かけるミック・ジャガー。(1971年)

最後に、スペンサー・ハートが紹介されています。
2002年にスタートしたこのブランドは、本に収められている中では一番新しいビスポークテーラー。
冒頭の集合写真でセンターに写っている人物が、創業者のニック・ハートです。
デヴィッド・ボウイやデヴィッド・ベッカムのオーダースーツも作っています。
このブログを読んでいる方なら既にお気づきかもしれませんが、英国BBCのドラマ「シャーロック」でベネディクト・カンバーバッチが着ているスーツも、このスペンサー・ハートのものなのです。
いやあカッコいい。
このテーラーが僕は好きなのでした。

img上の写真の右側にいるのがさっきのおじさんです。

もぐらくんとスボン / ズデネック・ミレル 内田莉莎子訳 1967

松本 知彦 for Private Time/2013.06.07/本

アニメーションから生まれた絵本、もぐらくんシリーズ。
チェコの絵本界を代表する作家、ズデネック・ミレルの作品です。
日本のキティちゃんと同様にチェコでは国民的キャラクターらしいです。

img第1作目はもぐらくんとずぼん

「もぐらくんとズボン」はシリーズの1作目。
作られたのは1957年。(出版は67年)
こちらも例に漏れず、発表から50年以上も経過してますが、今でも読み継がれています。
絵本って普遍性があるので、こうした古い作品でも今も定番として変わらない本が多いです。

他にも
もぐらくんとじどうしゃ
もぐらくん、おはよう
もぐらくん、ぼうけんだいすき
もぐらくんとまいごのうさぎ
もぐらくん、おうちをつくろう
もぐらくんとゆきだるまくんなどなど
シリーズはたくさんあります。

imgもぐらくんとずぼんで布を切るのはざりがにです。

imgもぐらくんは愛すべきキャラです。

もぐらくんの名前はクルテクといいます(チェコ語でもぐらのこと)。
無邪気で明るくほのぼのとしたキャラクター。
「もぐらくんとずぼん」は、ある日青い大きなポケットのついたズボンを見たもぐらが、そのずぼんが欲しくて仕方なくなり、かえる、ざりがに、ありなどの仲間の力を借りて青いオーバーオールを完成させるという話。
生地を裁断するところからではなく、植物を育てて糸を取ることろからはじまるのがスゴイです。(素材は麻だってことです)
60年代の作品なので、同じ時代のチェブラーシカ(ロシア)、トッポジージョ(イタリア)などに似たところがある気がします。

アニメーションから生まれただけあって、絵のタッチは動画風です。
アニメのシーンを切り出して印刷してるんじゃないかと思います。
でも僕はアニメはフルで見た事がないんです。
DVDも出てるみたいですね。

img描かれているアングルがいい、もぐらくんとじどうしゃ

僕がこのシリーズで好きなのは「もぐらくんとじどうしゃ」。
こちらも「もぐらくんとすぼん」同様に、自分で自動車を作るというお話。
もぐらくんが街で自分の自動車を運転するシーンが楽しいです。

imgポケット本もシリーズでたくさん出ています。

img5年くらい前に出版された大人向けもぐらくんの解説本。サブカルです。

ズデネック・ミレルは1921年チェコ共和国のクラドノ生まれ。
プラハの工芸美術大学で絵画を学んだあとにアニメーションスタジオで働く。
もぐらくんシリーズは、短編、長編など合わせて62作品を監督。
残念ながらズデネック・ミレルは2011年に亡くなってしまいました。
でも60年代の絵本には、現代にはない忘れた何かを感じさせてくれるものが多いです。

スーホの白い馬 / モンゴル民話  大塚勇三作 赤羽末吉絵 1967

松本 知彦 for Private Time/2013.06.06/本

こちらも小学校の教科書に出てくるお約束の絵本なので知ってる人も多いことでしょう。
1967年に出版された50年前の古い本です。

img50年前に書かれた本が今でも常に定番というのはスゴいことです。

img横長の版型に、全ページ見開きで描かれた絵は広大なモンゴル平野を表現しています。

ストーリーは悲しい内容です。
遊牧民の少年スーホは親のいない白い仔馬を拾って、一生懸命に育てます。
白い仔馬が大人になったある日、王様が娘の結婚相手を選ぶために開いた競馬大会に出場し、スーホと白い馬は見事一等を獲得します。
しかし王様はスーホが貧しいことを理由に約束を守らず、銀貨3枚を無理やり渡してスーホを殴って城から追い出し、馬だけを取り上げてしまいます。
馬が自分のものになったことに満足した王様は馬に乗ろうとしますが、振り落しされてしまい、それに怒って馬を殺すように命じます。
飛んできたたくさんの矢が刺さりますが、それでも白い馬は会えなくなって泣いているスーホの元へ戻ってきます。
スーホに会うと、馬は安心したように死んでしまうのでした。
それから悲しさと悔しさでスーホは眠れない夜を何日も過ごしますが、やっと眠れた日に夢を見ます。
それは、自分の身体を使って楽器を作って欲しい、そうすればいつもあなたのそばにいられる、と言って現れた白い馬の夢でした。
スーホはそれに従って馬頭琴と呼ばれる楽器を作り、片時も離しませんでした。
その美しい音色がモンゴル中に知れ渡り、この楽器が広まった、というお話です。

img鮮やかな色使いとデフォルメされたフォルムは迫力があります。

スーホと白い馬の強い絆、スーホの馬に対する愛情が物語の主題となっているのですが、ストーリー自体は本当にせつなく悲しいものです。
でもセンチメンタルなだけではなく、骨太で普遍的な強い物語に仕上がっているのは、モンゴルという大平原のお話ということもありますが、僕は絵の力が大きいと思います。

素朴で雄大さを感じる絵の作者は赤羽末吉。
50歳を過ぎて絵本作家としてデビューした人です。
スーホの白い馬を手掛けた時は57歳。
それが50年経った今でも、みんなに読み継がれているということは作家冥利に尽きると同時に感動を覚えます。
素朴なタッチはストーリーにぴったりというか、ストーリーそのもののという感じがします。
人々に感銘を与える絵の力、クリエイティブってこういうことが魅力ですね。
この絵本で赤羽末吉はサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。

imgこれが白い馬で作られた馬頭琴という楽器です。

げんきなマドレーヌ / ルドウィッヒ・ベーメルマンス 瀬田貞二訳 1939

松本 知彦 for Private Time/2013.06.04/本

こちらも古典的というか絵本の王道ですね。
なんと言っても80年くらい前に描かれた絵本という、、、それが現代でも読み継がれているのですから普遍的な何かがあるのだと思います。

imgマドレーヌのシリーズ第一作です。

マドレーヌはパリの寄宿舎で生活するアメリカ生まれの小さな女の子のこと。
このマドレーヌを主人公にしたシリーズ、その第1作がこの「げんきなマドレーヌ」です。
発刊は1939年。
古いっすねえ。
シリーズは全部で12冊。
シリーズの中で、マドレーヌはロンドンやローマに行ったり、アメリカのホワイトハウスまで行っちゃったり、スケールが大きいのがおもしろいです。

img2れつになって、パンをたべ、2れつになって、はをみがき、2れつになって、やすみました。 グッドな日本語訳です。

imgマドレーヌの入院している病院へ、お見舞いに行ったシーン。

パリの寄宿舎には12人女の子がいて、その中でも一番小さいのがマドレーヌ。
ある日マドレーヌは盲腸になって、救急車で病院に運ばれます。
11人の女の子が病院を訪れるとお見舞いのいただきものがたくさんあって楽しそう。
退院したマドレーヌは傷を見せて自慢すると、女の子はみんな盲腸になりたいと言い出す、という、、ストーリー自体は他愛もないものです。
でも先生や友達とのやり取りが生き生きとしていて、楽しい。
出てくるのが全員女の子なので、どっちかっていうとい女の子の子供に読んであげると、喜ぶかもしれないですね。

本はカラーと、黄色と黒の2色刷のページに分かれています。
カラーページには、エッフェル塔、コンコルド広場、オペラ座、バンドーム広場、ノートルダム寺院などなど、パリの名所が効果的に出てきます。

作者のベーメルマンスはオーストリア人。
父親はベルギー人の画家でした。
16歳からアメリカに渡ってホテルで働きながら絵を習い、第1次世界大戦(!)を挟んで、除隊後にニューヨークで絵本を発表して評判になります。
「マドレーヌ」という名は、奥さんの名前だそうです。
ベーメルマンスの経歴を知ると、マドレーヌがヨーロッパやアメリカを行き来するのが理解できる気がします。
当時は外国の情報がそれほど入って来なかった時代ですから、異国の情景を舞台にしたストーリーはみんなワクワクしたんじゃないですかね。

img2作目、マドレーヌと犬。

img左のページにサクレクーレ寺院が見えますね。

続いて出版されたのが「マドレーヌといぬ」
セーヌ川に落ちてしまったマドレーヌを助けた犬、ジェヌヴィエーヴとマドレーヌを描いたこの本でベーメルマンスはコルデコット賞を受賞しました。
この絵本、ここでは書きませんが、ラストのオチがいいんですよね。

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スイミー / レオ・レオニ 谷川俊太郎訳 1963

松本 知彦 for Private Time/2013.06.03/本

こちらも小学校の教科書に出てくる有名な絵本なので、ご存知の方も多いでしょう。
オランダ出身の絵本作家、レオ・レオニの描いた絵本です。
スイミーとはこの本に出てくる黒い小さな魚の名前。

img教科書にも出てくる有名な絵本ですね。

なんと言ってもこの本の特徴は、すべて版画の技法で描かれていることです。
版画というより、スタンプと言った方が近いかもしれませんが、そのカタチをしたモチーフに絵の具を塗ってペッタンペッタン、スタンプアートとでも言える技法で全ページが作られています。
それが幻想的で美しい。

img全部スタンプなんですよね。

img黒いまぐろに仲間がみんな食べられちゃうシーン。

img1人ぼっちになったスイミーは海の中を旅します。

ストーリーも特徴があります。
赤い魚の兄弟、仲間の中で、なぜか1匹だけ黒いスイミー。
ある日、仲間は大きなマグロにみんな食べられてしまいます。
一匹だけ生き残ったスイミーは、それから海を一人で旅して、自分の仲間にそっくりな赤い小さな魚たちに再び出会います。
でも彼らはマグロに食べられることを怖がって、岩陰から出てこようとしません。
そこでスイミーは考えて、みんなで大きな魚のカタチになって泳ごうと提案。
1匹だけ黒いスイミーは大きな魚の目の役目をして、みんなで力を合わせて大きな魚を追い出す、、
というストーリーです。

img魚のカタチになってまぐろを追い払うシーン。スイミーは目になっています。

みんなで力を合わせれば何でもできる、と読めそうですが、スイミーこそが作者のレオ・レオニ自身であり、芸術家として他の人が見えないことを見る役割を自分が果たすということを、この絵本に込めたとも言われています。
オランダで生まれ、結婚してイタリアで生活していたレオは、当時のイタリアファシスト政権に反対し、アメリカに亡命。
この本が描かれた1963年、アメリカで既に名声を得ていたレオは、あえてイタリアに帰国し、自分の絵本を自由に発表し始めた頃でした。

ページにはテキストは少なく、ほとんど絵だけで理解できるようになっています。
この手法は1959年のデビュー作「あおくんときいろちゃん」から変わらない気がします。(この本も持ってます。)

うちには、気が付けば絵本が100冊以上あるんです。
絵本って視覚的にストーリーを伝える、ビジュアルコミュニケーションの原点みたいなもので、作家の表現力、伝えたいこと、色々なことがとても勉強になります。
子供向けだから、と言ってあなどれないのです。

This is シリーズ / ミロスラフ・サセック

松本 知彦 for Private Time/2013.05.30/本

皆さん、This isシリーズという世界各国の都市をモチーフにした絵本を知ってますか?
旅行のガイドブックのようなシリーズです。

imgシリーズは全部で18冊。

洒脱なタッチで都会的に描かれた作品。
でも印刷があまりよくない。
原画はもっときれいなんだろうなあと思います。
原画を見てみたいですね。
展覧会やってくれないかなあ。

この絵本の作者はミロスラフ・サセック。
1916年にチェコのプラハで生まれて、第2次世界大戦の時にチェコを離れて、パリ、ミュンヘンに移り住み、その間にこのThis isシリーズを制作しました。
第1作目はエコール・ド・ボザールに通うために滞在したパリ。
その後、ロンドン、ローマでシリーズを完結させようとしますが、あまりに人気が出たので再開し、1959年~74年の間に18冊の作品を継続して制作します。

この本は英語だけでなく、その国の言語で書かれたものも出ていますが、僕は訪れた国で、その国の言語で書かれたバージョンを買う、ということを自分の密かな愉しみとしていて、もちろん全部は揃ってないですが、思い出として現地で買ってものを何冊か持っています。

img全部のシリーズを見たわけではないですが、一番好きなのはロンドン。

img上2つがこの本のオープニングですが、最高です。最後の地下鉄もいいね。

その中でも僕が一番好きなのはロンドンです。
冒頭、全部グレーに塗られた何だかわからない絵に、This is LONDONというテキストが添えられた意味不明のページからはじまります。
よくわからないまま次のページをめくると、次にロンドンの街並が描かれていて、前のページの塗りつぶされたグレーの絵は霧で、それが晴れて街が現れたという、、なんともユニークでヒネリの効いたオープニングが大好きです。
このThis is Londonは1959年にニューヨーク・タイムズ選定最優秀絵本賞を受賞。
今から50年前に描かれた街の情景です。

imgシリーズ第1作のパリは、ヴァンドーム広場やノートルダム寺院、カフェやポンヌフが描かれています。

img名所旧跡の多いローマですが、この本の見どころは乗り物のイラストです。

街の名所はもちろん、そこで暮らす人々のライフスタイルまで、表情豊かに事細かに描かれていて、実際にその都市に滞在して1冊の本を作り上げるという、このシリーズならではのリアリティがあります。
時間もかかるでしょうけれど、なんだかうらやましい仕事ですね。

1980年のThis is Historic Britainを出した6年後の1986年にこの世を去りました。
なんで日本に来てくれなかったのかなあ。
香港までは来ていたのに。

くまのがっこう / あいはらひろゆき(文)あだちなみ(絵)

松本 知彦 for Private Time/2013.05.29/本

どこかでこの本1度は見かけたことあるんじゃないでしょうか?
「くまのがっこう」シリーズです。

imgこのシリーズ、本屋で見かけたことがある人も多いのでは。

第1作は、2002年に出版された「くまのがっこう」。
それから10年が経過して、今ではシリーズで10冊以上が出版されています。
うちでは10年前、「くまのがっこう」が出版された時に、たまたま購入していました。

内容はどれも12匹のくまの兄弟のお話です。
11匹が全員男の子で、一番下の12番目だけがジャッキーという女の子。
このジャッキー中心に展開されるストーリーがメインです。

imgこれがシリーズ第1作目です。

imgどのシリーズでも、必ずジャッキーが泣くシーンがお約束で出てきます。

「くまのがっこう」は、バンダイキャラクター研究所が開発したオリジナルキャラクターの第1号らしいのですが、このキャラクターが生まれるまでのストーリーがちょっとおもしろいので紹介します。
「くまのがっこう」が出版される以前、同社は若い女性向けに2冊絵本を出していたようですが、これが売れずに結果は失敗に終ります。
しかし、その購買データから若い女性よりも、30代の母親に支持されていることがわかり、ターゲットを30代の母親とその子供にシフトして「くまのがっこう」を発刊したところ、累計で180万部の大ヒットになったというもの。
最初からそもそもなぜ若い女子に絵本を売ろうとしたのか謎ですが、この話はちょっとおもしろいです。

言われてみれば確かに子供が読む絵本とは言え、大人女子のハートをくすぐる今のトレンドが押さえられていて、北欧テイストやマリメッコ、雑貨のような世界観が絵の随所に出てきます。
インテリア好きのおしゃれなママに読んでもらいたいんでしょうね。
僕の勝手なイメージでは、想定読者は北欧好きで、パンを自宅で作っているような、オーガニックな女子です。笑
もしかすると手芸や雑貨、文房具も好きかも。
狙いはハッキリしています。
その分、わかりやすい=ヒットということになったんだと思います。
このプロセスは、勉強になりますね。
やっぱり明確なターゲットの絞り込みをしないとモノは売れないということです。

img絵本でありながらも、トレンドを押さえた絵のテイスト。

あんまり尖った家具屋にはむずかしいですが、アクタスくらいのちょっと北欧、ちょっと気軽におしゃれくらいのインテリアショップに置いてあってもいいと思います。
アクタス自身が出版してもおもしろいですよね。
(最近アクタスが出版した、自社のスタッフが住む部屋のインテリアの写真集は売れてるみたいですが)

そんなわけで絵本といえども色々な仕掛けがあって、世の中の流れとシンクロしているというお話でした。

SHARP SUITS / Eric Musgrave

松本 知彦 for Private Time/2013.03.21/本

本のタイトルが何といってもシャープスーツですからね。
現在に至るまで年代を追って、英国で生まれたシャープなスーツの歴史がビジュアルで紹介された本です。
冒頭は「2001年宇宙の旅」の衣装デザインを手がけたことでも知られ、ロイヤルワラント(英国王室御用達)の称号を持つサヴィルロウのテーラー、ハーディ・エイミスの言葉からはじまります。
"Men wear a suit because it's the gear of the gentleman the world over." Hardy Amies

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この本に出てくる人がすごい。
俳優ではケーリー・グラント、フランク・シナトラ、スティーブ・マックイン、ショーン・コネリー、ロバート・レッドフォード
ミュージシャンではエルビス・プレスリー、ビートルズ、チャーリー・ワッツ、ボブ・ディラン、ジェームス・ブラウン、ポール・ウェラ、デュランデュラン、デヴィッド・ボウイなどなど。

img60年代のロンドン。髪型、スーツ、思いっ切りモッズです。カッコいい!

img左上がビートルズのスーツを作った伝説のテーラー、トミー・ナッター。ビートルズの黒のスーツがカッコいい。

img60年代にビートルズが着ていた黒のモッズスーツは、70年代に現れるバンド、ジャムのポール・ウェラに(左)

だいたいこの手の本というのは、サヴィルロウを中心に、スーツの歴史を遡るのですが、この本はウィンザー卿などクラシックなものも取り上げつつ(ウィンザー卿は当時決してクラシックではないですが)、それだけに留まらず時代ごとのスーツのデザインの変遷を映画やロックスター、サブカルチャーまで枠を広げて取り上げているのがおもしろいところです。
それらが写真で見られるので飽きません。
ただのクラシック紹介に陥ってないところがこの本の良いところですね。
特にポール・マッカートニーが1966年にビートルズとして来日した際、東京のホテルの部屋でテーラーにオーダーしたスーツを試着している写真などもあってとても興味津々です。
それと60年代の映画オーシャンズイレブン(数年前のジョージ・クルーニー主演の映画はリメイク)の写真、フランク・シナトラ、ディーン・マーティン、サミーデイビスジュニアたちのスーツ姿はカッコいい!

img左からディーン・マーティン、フランク・シナトラ。いやはやカッコいいんですけど。

img60年代のスクリーンから。上からショーン・コネリー、ケーリー・グラント、マイケル・ケイン。たまりませんね。

デザイナーではハーディ・エイミス、トミー・ナッター、トム・フォード、リチャード・ジェイムス、イヴ・サンローラン、ラルフ・ローレン、ジョルジオ・アルマーニなどが写真で出てきます。
特に60年代にビートルズからオーダーを受けてスーツを作っていたトミー・ナッターのページは興味深いですね。
今ロンドンで活躍するテーラー、ティモシー・エベレストは彼の弟子です。
60年代後半~70年代初頭のイギリスのスーツのデザインはちょっとすごいです。
パンツも太いですが、ラペルも相当に広い。

img冒頭に出てきたハーディ・エイミス。すごいラペル幅。世界で初めて男女両方のプレタを手掛けた彼のスタイルは、フェミニンでお洒落。

紳士の国、そしてスーツ発祥の地イギリスで、スーツが常に進化していく様子、それが音楽というフィルターを通して世界に広がったことが実証されていておもしろいです。
モッズファッションで身を固めたビートルズ、ショーン・コネリー扮するモードな007、TVシリーズ・ナポレオンソロでのロバート・ボーンの普通でシックな着こなし、クールの極みケーリー・グラント、僕はやっぱり60年代のスーツが好きですねえ。

FUTURE CURATION / 三越伊勢丹

松本 知彦 for Private Time/2013.03.06/本

もう、この本見ましたか?
新宿伊勢丹本館の全面リニューアルをテーマにした美術手帖の別冊です。
なぜに美術手帖??
高校生で美大専門予備校に通っていた頃、僕は美術手帖を愛読していました。
当時書かれていたのは純粋芸術のことが主で、受験生や美大生の本という印象を今でも持っています。
でも最近、アートがブームですから編集方針も変わって、読者も変わったことでしょう。
さてそんな美術手帖別冊です。

img表1は墨と箔押し。

img赤い糸でかがってあって、本は180度まで開けます。これはいいね。

なんつったってフューチャー キュレーションですよ、あ~た。
フューチャーをキュレーションしちゃうんですから(まんまですけど 笑)
ファッションとアートをいかに"フュージョン(融合)"し、情報やモノを"キュレーティング(独自編集)"していくかを提示する新たな未来に向けたビジュアルガイドブック・・・らしいです。
登場する人物がすごい。
篠山紀信、名和晃平、坂本龍一、山本耀司、インテリアデザインを担当した丹下憲孝や森田恭通の対談などなど。
本当に気合入ってます。
失敗は許されないですね、これは。
リモデルに100億円を投資してるんだから(そんなに使うならビル自体建て替えられるんじゃないかと思うんだけど)、気合入れなきゃいけませんよ、そりゃ。

img篠山紀信先生による現代美術家、名和晃平とのコラボ写真。

img本文組みは和英併記になっていて、文字がノドを横断するレイアウト。読みにくいというか読まないね。

img唯一対談ページは、普通の組みになってます。丹下健三先生の息子と大地真央の旦那対談。

img新宿伊勢丹の前でファッションの撮影しているのがちょっとおもしろいです。

海外展開を意識してか、全頁バイリンガルで作られています。
装丁は中島英樹。
糸かがり綴じの製本が目を引きます。
しかし中面は読みずらい、、コンセプトがアートだからしょうか。。
これはこれでいいんでしょうね、きっと。
アート×ファッション=キュレーションということで、伊勢丹側がアートのガイドブックである美術手帖を出版している美術出版社に持ち込んだのだと勝手に推察します。
よくあるケースですが、たぶん企業側が出資しての自費出版でしょう。
美術手帳は一般の人には知名度は低いだろうけれど、カーサブルータスやVOGUEを選ばなかったのは僕はいい目の付け所だと思います。
商業的にはそりゃVOGUEの方が効果あると思いますけど、コンセプトとしてはこれでいい。
そういえば、今美術出版社の社長をやっている大下君は、以前僕が務めていた企業の同じ部の後輩でしたね。
辞めて家の会社を継いだけれど、元気だろうか。

img表4は、当たり前体操な、伊勢丹チェックになってます。

価格は1,400円。
この本自体はそんなに売れないだろうなあ。
まあ、それが目的ではないのでしょうけど。
しかし気合入ってますよ。
伊勢丹は本日、リモデルグランドオープンです。

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