ロンドンTate Modernに見る美術館のVIシステム

松本 知彦 for Private Time/2016.04.20/旅

今月のアタマに、2年ぶりにロンドンに行ってきました。
4月だというのに激寒でした・・・・・
今回はその際に訪れたテートモダンのことをお話ししますね。

imgミレニアムブリッジと高い煙突のあるTate Modern

2000年にオープンした割と新しいこの美術館。
1963年に建設されたレンガ作りの発電所の建物を再利用したものです。
(発電所の設計は、ピンクフロイドのジャケットでも知られるバタシー発電所の設計者と同じ人なのでデザインが少し似ています。)
場所はセントポール大聖堂からテムズ川を挟んだ向かい側、ノーマン・フォスターが設計したミレニアムブリッジを渡ったところにあります。
対岸からでも見える99メートルの煙突がランドマークにもなっています。
建築国際コンペ(安藤忠雄も参加)を勝ち抜いたスイスの建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロンが設計を担当しました。
ヘルツォーク&ド・ムーロンと言えば、日本では青山のプラダが有名ですね。(向かいのミュウミュウも)

img出口近くにある巨大なタービンホール。

imgウォーホール、デュシャン、特にマーク・ロスコだけを集めた部屋は有名

現代美術を専門に扱っており、フロアは地下1階~6階まで。
かつて発電所の巨大なタービンが置かれていた場所も展示に使用しています。
今年の6月には建物のすぐ裏に、同じくヘルツォーク&ド・ムーロンの設計による新館もオープンする予定。
僕はこの美術館が大好きで、ロンドンに来た際には必ず訪れることにしています。

さて今回お話しするのは美術館の建物や収蔵作品についてではなく、グラフィックについてです。
2階と4階が常設展示、3階は企画展、6階がレストラン、地下はミュージアムショップになっていますが、各フロアには目立つ大きなサインが壁に貼られています。
このサインに使われている書体は、この美術館向けに開発された「Tate-Regular」というオリジナル書体。
調べてみると1979年にフォルクスワーゲンがCIとして採用したVAG Roundedをベースに開発されたもののようです。(現在はAdobeへライセンス譲渡)
僕が驚いたのは、館内のあらゆるところに使われているサインは、すべてこのフォントで統一されていること。
壁に貼られたサインだけでなく、エントランスの看板、作品の隣にあるネームプレート、カタログ、ミュージアムショップの値札、カフェのメニュー、レジの看板、トイレに至るまで、館内にある視覚情報すべてです。
Webサイトもこのフォントで統一されています。
作品の展示に関わる部分だけは、統一されている美術館もあるかもしれませんが、時刻表やトイレまで、文字情報のフォントがすべて統一されている美術館ってほとんどないのではないでしょうか?
ロゴだけは固有のフォーマットを持たない、不定形のマークとして変化するものを採用しています。
これはトマトが手掛けたテレビ朝日のCIと同じコンセプトですね。

img常に形を変えるロゴとTate-RegularのWebフォントを使用したWebサイト

img購入可能なTate-Regularとそれを使用した館内の情報サイン

このサインシステムを見ていて、さらに気がついたことがあります。
それはカラー計画です。
来館者の中で気が付かない人も多いかもしれませんが、サインは用途別に色分けがされているのです。
ピンクは常設展、ブルーは企画展、グリーンは映像、黒は美術館の共有部分。
この4色と前述のフォントで館内のサインシステムが構成されています。

img細部まで徹底して統一されたフォント。商品の説明やカフェの案内まで。

img一方で美術館の共有スペースや設備関連はすべて黒で統一

よく見ると常設展のパンフレットはピンク、トイレは真っ黒、美術館の入り口にある企画展の看板はブルー。
この考え方はフォント同様、全フロアに適用されていますが、これまた驚きなのがこのシステムをミュージアムショップの商品にまで落とし込んでいることです。
スタッフのお土産として購入したペンや消しゴム、ボールペン、バッジ、ノートに至るまで、
美術館のオリジナルグッズもこの4色のカラーリンクなのです。
こんな美術館ある???

ロンドンはデザインの先進国って言いますが、こうした事例を見るだけでも、とても勉強になります。
担当したデザイナーには汎用性のあるデザインシステムを作る力量が当然求められたことでしょう。
それを細部に至るまで徹底して採用している美術館も偉いですね。
VI(ビジュアルアイデンティティシステム)とは、決してサインだけではなく、立体物や空間、もっと言えばそこで味わう体験にまで影響を与える要素だという当たり前のことに気づかされます。
別の言い方をすると、ブランディングの重要な要素ですね。
でもこういうことって、気が付かない人はまったく気が付かないかもしれない。
しかしクリエーターならこういうことに敏感で、常に感じ取るような訓練を日頃からから行うべきだと思います。
ということで、こんな短い文章ですが、皆さんもこの記事を読んで、Tate Modernに行ったような疑似体験をしてもらえたら嬉しいです。
ということで、今回はロンドンのTate Modernに見る美術館のVIシステムについてのお話しでした!

img思わず欲しくなるミュージアムショップで売られている商品。

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